著者の中西進さんは国文学者で、元号「令和」の発案者のようだ。
この本は、いろいろな日本古来のことばを語源から考えて紹介している。著者は『万葉集』など古代文学の比較研究をされているだけあって、言葉の説明のために『万葉集』などから引用される歌もおもしろい。
文中で何度か登場する、柳田国男さんが警告した〝どんな字病〟はそのとおりで、あとから漢字を当てられているのだから、音で考えるのが道理なのだなと納得させられる。
紹介されているおもしろい例はたくさんあるが、以下に少しメモを。
○「みち(道)」
ち=長く伸びるもの、風を意味する。「はやて(疾風)」の「て」と同義
み=尊いものに冠する接頭語
○断り・理(ことわり)の古語「ことわり」
「こと(事)」を「わる(割る)」=分析する
○さいわいの古語「さきはひ」
はひ=ある状態が長く続くこと(けはひ、あぢはひ)
さき=花が咲くの「さき」
さきはひ=心の中に花が咲きあふれてずっと続く
○ひがし にし
ひがしの古語「ひむがし」
ひ(日)+むか(向)+「し」
「し」=風のこと。おそらく西の「し」も
○はる
陰鬱に覆われていた自然が晴れやかになる
さあっと野山が開けて輝き始める
「冬ごもり 春さりくれば……」(万葉集)
・晴る
・張る(芽が膨らむ、強く盛んになる)
・墾(は)る(田畑を耕して開く)
→総じて「明るくなる、見通しが良くなる」
・広く平らなところ「はら(原)」も仲間
・はる+ふ=はらう(祓う、古語は〔はらふ〕)
お祓い=悪いものを取り除いてきれいにする
・冬が取り払われてやってくるのが「春」
・新しい年が始まる大きな区切り
○ふゆ
ふゆは寒くて冷える、「ひゆ(冷ゆ)」
震えるほど寒い、「ふゆ(振ゆ)」
○あき
十分に食べられる収穫の季節。「あき(飽き)」
満ち足りる、十分すぎてもういらない、明らかにする、あきらめる(諦める)も仲間
○なつ
語源ははっきりしない
「あつ(熱い)」が変化するとする説もある
- 感想投稿日 : 2020年9月26日
- 読了日 : 2020年9月26日
- 本棚登録日 : 2020年9月26日
みんなの感想をみる