ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ

著者 :
  • 小学館 (2003年6月1日発売)
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 著者の中西進さんは国文学者で、元号「令和」の発案者のようだ。
 この本は、いろいろな日本古来のことばを語源から考えて紹介している。著者は『万葉集』など古代文学の比較研究をされているだけあって、言葉の説明のために『万葉集』などから引用される歌もおもしろい。
 文中で何度か登場する、柳田国男さんが警告した〝どんな字病〟はそのとおりで、あとから漢字を当てられているのだから、音で考えるのが道理なのだなと納得させられる。
 紹介されているおもしろい例はたくさんあるが、以下に少しメモを。

○「みち(道)」
 ち=長く伸びるもの、風を意味する。「はやて(疾風)」の「て」と同義
 み=尊いものに冠する接頭語

○断り・理(ことわり)の古語「ことわり」
 「こと(事)」を「わる(割る)」=分析する

○さいわいの古語「さきはひ」
 はひ=ある状態が長く続くこと(けはひ、あぢはひ)
 さき=花が咲くの「さき」
 さきはひ=心の中に花が咲きあふれてずっと続く

○ひがし にし
 ひがしの古語「ひむがし」
  ひ(日)+むか(向)+「し」
 「し」=風のこと。おそらく西の「し」も

○はる
 陰鬱に覆われていた自然が晴れやかになる
 さあっと野山が開けて輝き始める
 「冬ごもり 春さりくれば……」(万葉集)
 ・晴る
 ・張る(芽が膨らむ、強く盛んになる)
 ・墾(は)る(田畑を耕して開く)
  →総じて「明るくなる、見通しが良くなる」
 ・広く平らなところ「はら(原)」も仲間
 ・はる+ふ=はらう(祓う、古語は〔はらふ〕)
  お祓い=悪いものを取り除いてきれいにする
 ・冬が取り払われてやってくるのが「春」
 ・新しい年が始まる大きな区切り

○ふゆ
 ふゆは寒くて冷える、「ひゆ(冷ゆ)」
 震えるほど寒い、「ふゆ(振ゆ)」

○あき
 十分に食べられる収穫の季節。「あき(飽き)」
 満ち足りる、十分すぎてもういらない、明らかにする、あきらめる(諦める)も仲間

○なつ
 語源ははっきりしない
 「あつ(熱い)」が変化するとする説もある

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  日本語
感想投稿日 : 2020年9月26日
読了日 : 2020年9月26日
本棚登録日 : 2020年9月26日

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