夜だけ営業している定食屋<ばんめし屋>。店主の夏神と、居候兼店員兼料理修業中の元俳優の海里と、眼鏡の付喪神ロイドが営むその店で、様々な客や事件との遭遇を描くシリーズ第三作。
第二作は貸出中だったため、第三作を先に借りてみたが特に支障なし。
どうも第二作で海里は完全に芸能界への未練を断ち切り、<ばんめし屋>で修業しながら料理人として頑張ることにしたらしい。
そしてこの第三作は長年確執のあった兄との関係の変化を描く。
父親が早くに亡くなって以後、年の離れた兄が父親代わりとして自分を育ててくれたという恩はありつつも、自分の価値観をとことん押し付けてくる兄にとことん抵抗してきた海里と、海里の価値観や生き方が理解出来ない兄。
これは兄弟だけでなく親子関係でも起こりそうなこと。わかるけれど、兄の頑固さはちょっと酷いような。ここまで拗れると上手くは行かないだろうし、程よく距離をとって付き合うほかなさそう。
そこに現れた兄の婚約者。彼女は必死なまでに兄と海里との距離を縮めようとするのだが、その訳は。
そしてもう一つ気になっていた、夏神の過去。こちらもなかなかハードなものだった。海里と違い人の死が絡むだけに辛い。
しかし夏神もまた海里との出会いで救われた部分があったと分かりホッとする。
カバーイラストが緒川千世さんなので、この夏神と海里との抱擁シーンなんて、どうもイケナイ妄想をしてしまう。それは置いておいて、支え合える仲間がいるというのは良いことだと思う。
今作は幽霊の出番はわずか。しかしロイドのメガネをかけると見えないはずのものが見えるという設定は面白い。
先に読んだ「京都伏見あやかし甘味帖」と違い、こちらは料理がストーリーにしっかり絡んでいる。
流行のパンケーキだが、原点に戻った素朴なパンケーキも良い。
- 感想投稿日 : 2019年7月29日
- 読了日 : 2019年7月28日
- 本棚登録日 : 2019年7月29日
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