ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年6月14日発売)
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本棚登録 : 2716
感想 : 198
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ドラマティックなビジュアルの事件から、大阪府警の面々の動きが眼前に見えてまるで刑事になった気分になれる濃い短編、詩的な静けさの作品から賑やかな飲みの席の会話までさまざまな味わいの短編集。
本書にある全作品には、かならずある一文字の漢字が登場する―という遊び心が楽しい。こんなところに、と嬉しい登場の仕方もあり。

◆切り裂きジャックを待ちながら
主な現場:千里中央 スペースQ
警察サイド:大阪府警船曳班
時期:12月24日
かつてアリスの作品を舞台化したいとコンタクトをとってきた演出助手からの、劇団内の誘拐脅迫事件の相談をきっかけに事件にかかわるアリスと火村。
元テレビドラマのノベライズらしく、劇的なビジュアル、幕切れが見もの。

◆わらう月
主な現場&舞台:シドニー。語り手の職場、職場近くの喫茶店
警察サイド:大阪府警船曳班、森下刑事
時期:8月
アリスの一人称ではなく、メイン人物の女性が語り手のため、アリスが客観的に見られる珍しい短編。アリスと火村の連携も見どころ。月にまつわるエピソードのあれこれが詩的で不思議な読後感。

◆暗号を撒く男
主な現場&舞台:宝ヶ池の一軒家。新世界の串カツ屋
警察サイド:「たおやかな風貌だが蝮のようにしつこくてタフ」な京都府警 柳井警部
時期:11月20日の1週間後
アリスの先輩作家、朝井小夜子が登場。アリスと火村と3人の飲みの席での事件の話。家のなかに撒かれた物たちの意味は?

◆赤い帽子
主な現場:木津川、大浪橋付近
警察サイド:大阪府警船曳班、鮫山警部補、森下刑事
時期:6月10日
大阪府警の社内雑誌に掲載された、森下刑事が主役の、大阪府警の大阪府警による大阪府警のための短編。
森下刑事の暮らし方等日常についての考えや、アルマーニのスーツの理由、大阪府警のチームワークが味わえる名スピンオフ。ぜひ次回はコマチさんも交えて。

◆悲劇的
主な舞台:皇居の森を望むとあるホテルのバー、英都大学火村研究室
警察サイド:登場なし
時期:アスファルトに枯葉が転がる季節(11月?)および2か月前
編集担当の相棒・片桐光雄との飲みの席で語られる、火村の書いた合作の小説?のお話。作者いわく「ミステリではなく、火村英生に関する注釈」。ひと休みにコーヒーを呼ばれようと火村の研究室に立ち寄ったアリスに、「読んでみないか」と差し出されたものは?

◆ペルシャ猫の謎
主な現場:武庫川駅近辺の一軒家
警察サイド:兵庫県警 樺田警部、コーヒー通の野上部長刑事
時期:2月17日~
作者公認?の問題作?? アリスの小説のファンがメイン人物として登場。小説内小説のタイトルにまで猫があふれ、読んでいて猫愛に可愛切なくなる、猫好きにはたまらない一編。

◆猫と雨と助教授と
主な舞台:北白川の下宿
警察サイド:登場なし
時期:4月
3月3日に拾われた、猫のモモちゃん登場。瓜太郎、小次郎はじめ、深い理解に基づいて猫への接し方を変えている火村と篠宮時絵ばあちゃんの猫かわりがりの話。雨の夜のイメージが胸にしみる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2015年2月1日
読了日 : 2015年1月25日
本棚登録日 : 2015年1月31日

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