つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2014年1月7日発売)
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未来を育てる
ひとを育てる
公共図書館の使命は長期的なスパンで考えなければならないことだが、現実問題としての日本社会全体の衰退-人口減少、経済停滞、緊縮財政-による予算削減という直近の課題をクリアせねばならない。そういった厳しい状況の中で地道に地域に根ざした努力を重ねて新しい可能性を切り開いている数々の図書館に取材して希望のある内容になっている。

民間への業務委託についての考察が特に良かった。問題は委託制度そのものではなく、その運用の仕方で。委託によって直営ではできない何を達成するのか、それは本来の公共サービスの存在意義にかなっているものなのか。目指すものが明確で、市民にもそれが共有されているのか。目的を達成し維持するため全体をしっかりと統括するガバナンスが必須であることがよくわかる、TRCとCCCを対比して両方きちんと取り上げているのでわかりやすかった。

地方政治との関わりについてはもう少し掘り下げてもらいたかった。図書館運営の方向性(ひいては地域の自己投資の優先順位)が、首長の理念や理解に大きく左右されるのであれば、市民はそこにどのように関わっていくべきなのか。より多くの市民が、受け身ではなくてもっと「当事者意識」を持って政治に関心を持ち働きかけていく土壌を作っていくにはどうしたらいいのか。

後書きにあった、東日本大震災後の被災地の図書館の姿、その後の民間委託された図書館への評価などを含めた続編が読みたいと思った。

しかし出版不況にしても、図書館の将来にしても、地方の人口と経済がどうにかならないと、こんなに皆各地で努力しているのに早晩限界がきてしまうのではないかと心配にもなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: my library
感想投稿日 : 2021年4月25日
読了日 : 2021年4月25日
本棚登録日 : 2021年1月15日

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