グラスホッパー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2007年6月23日発売)
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本棚登録 : 49896
感想 : 3654
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伊坂さんの殺し屋小説の最初の作品。妻への復讐のために殺し屋を追う鈴木と自殺屋の鯨、ナイフ使いの蝉の三人を中心に物語が進む。それぞれの人物の内面が分かって面白い。殺し屋の物語だから残酷な部分もあるが、三人とも魅力的で、物語が進むにつれてどんどんと繋がっていくのも良かった。三人が仲間になるのか敵になるのかが全然想像出来なくてとてもワクワクした。最後の「バカジャナイノー」の後に鈴木は孝次郎と会えたのか、何を話したのか、このバカジャナイノーは何に対してなのか。とても気になる終わり方だが、鈴木が今までのことと決別をつけて、新しい人生を送ることが伝わってきてスッキリした。

梶とか岩西とかが死んでしまうのは予想がついたが、鯨と蝉が死んでしまうとは思わなかった。この二人が死んでしまったせいか、鈴木も電車に向かって押されて死んでしまうのでは無いかとも考えてしまったが大丈夫でよかった。この物語を簡単に言うと、主人公の周りの人達は死んでしまうが、主人公は今までの自分と決別をつけて新しい人生を歩むこととなる。この設定はこの前読んだゴールデンスランバーとよく似ている。ページ数の関係もあると思うが、ゴールデンスランバーの方がこの作品よりもページが進むのが早くて、終わり方も良く感動できた。伊坂さんが三年間でとても成長したのが伝わってくる。伊坂さんの作品は発売日順に読んだ方が成長が伝わってきていいと思う。

「息子さんに家庭教師をつける気はありませんか」色々答えを考えていたが、予想外すぎて面白かった。さすが伊坂さん、こんな答えどうやって思いつくのか。他には、鯨が同じ小説を読んでいて同志かと思って殺せなかったと言ったところには、本当に読書には人と人を繋ぐことができるといいう意味が隠されていると思う。

世の中の不幸は誰かが高をくくったことが原因とか、命より利便性っていうのは現在社会でもいえる。貧富の差はどんどんと広がっていき、海外では、安全性は低いが利便性のいい商品が開発されている。この二つの言葉は伊坂さんの今の社会に対しての考えなのかもしれない。物語の構成もよく、とても面白く、いい作品だった。






読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2021年7月19日
読了日 : 2021年7月17日
本棚登録日 : 2021年7月17日

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