ゴールデンスランバー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年11月29日発売)
4.14
  • (3707)
  • (3642)
  • (1693)
  • (265)
  • (66)
本棚登録 : 37480
感想 : 2396
5

伊坂さんが書いた過去の本屋大賞受賞作品。とても物語の世界に入り込めてハラハラしながら読んだ。登場人物がとても魅力的で、連続殺人犯までも魅力的で感動させられた。読み終えた後に第三部の事件から三ヶ月後のところを読み直した。再読させるように考えられて作品が作られているのだ。この物語は、首相がラジコンで殺されて、主人公の青柳が犯人にされる。警察は事件を穏便に解決させるために、彼を射殺しようとしてくる、相手は巨大な組織。もし現実世界で首相が爆殺させられて、自分が彼と同じ状態になったらと考えるとぞっとする。

読み始めの時から、いつもよりもページが進むのが早かった気がする。事件について色々な角度から見ていて、現実感があって、ドキドキした。森田は爆発で死んでしまったが、青柳を守った正義感は感動した。「人間の最大の武器は習慣と信頼だ」という考えからも森田の性格が出ていると思う。三浦は「人間の最大の武器は思い切りだ」と考えていて、保土ヶ谷もそう言う。私はどちらとも正しいと思う。というか人間の最大の武器はこれだけでは無いと思う。その中から何を選ぶのかはその人の価値観だ。だが、青柳は人間の最大の武器は何か自分の意思で答えていない。青柳はどれを選ぶのか知りたかった。それを書かないのもこの作品の良い所なのかもしれないが。

偉い方々は利権でしか動かないことや、マスコミが情報を正確に伝える役割を果たさず視聴者が求めてる情報を選んで報道していること、警察は事件を穏便に解決するために発砲することなどは残念だ。ニュースを見ると情報をマスコミが操作してるのではないかとか、本当は自殺ではなく警察や組織による射殺ではないかと考えてしまった。組織は本来の役割を忘れてしまっている。

結局、事件の真犯人は見つからず、死者も出してしまった。それなのに、何故か爽やかな気持ちになり、スッキリした。第五部の事件から三ヶ月後の部分で、それぞれの人物がどうなったかが書かれていることも良かった。最後の「痴漢は死ね」と「たいへんよくできました」は本当に感動した。とても面白く、登場人物も魅力的で、この作品は伊坂さんの作品の中でも傑作だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2021年7月5日
読了日 : 2021年7月4日
本棚登録日 : 2021年7月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする