ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1996年3月1日発売)
3.78
  • (2156)
  • (2003)
  • (2968)
  • (292)
  • (76)
本棚登録 : 19008
感想 : 2165
4

高校生、時田秀美くんの生活と意見。
自分の頭で考え、自分がどういう人間か理解している。
高校生にして年上の女性、桃子さんと付き合っている。
いい顔をしていて、女にもてる男がかっこいい、と考える。
そして、学校に代表される世間の常識に距離を置き、頭だけ発達した人とは一線を画す。

この連作小説で面白いのは、そのかっこいい秀美さえ、相対化されてしまうこと。
例えば、学校の男子生徒の憧れる美少女の山野舞子。
彼女は好かれるためのあらゆる努力を自然に見せかける達人である。
秀美は彼女のこういうところに違和感を覚えているのだが、彼女から自分を特別だと思っているだろう、と喝破される。
母親仁子、恋人の桃子からも、しばしばやり込められる。

否定的に描かれる学校的価値観だが、そこにいる教師たちにも櫻井先生のような味わいのある人が配される。
「眠れる分度器」では、小学生時代の秀美が反発する担任の奥村さえ、仁子により他の面が引き出されていく。
疎ましい世間でも、うまくやり過ごす懐の深さが感じられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月1日
読了日 : 2020年11月1日
本棚登録日 : 2020年11月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする