歴史をかえた誤訳 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2004年3月28日発売)
3.32
  • (2)
  • (40)
  • (58)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 470
感想 : 50
4

読み応えのある翻訳論だった。

第一章、第二章などは、太平洋戦争中、そしてその後の政治の場面の中での誤訳が扱われている。
その辺りは政治状況についての知識や、興味があまりなかったので、少々つらかった。

後半は、翻訳がどこまで可能なのかという話が中心。
こちらの方は、かなり読みやすい。
芭蕉の古池の句をどう訳すかという話は、非常に面白かった。
言葉を単純に置き換えるレベルなら、いかようにも訳すことはできるけれども、「かはず」を「frog」と訳して済ましてよいのか、とのこと。
英語圏でいう「frog」は、侘びさびどころか、出てくるだけで噴出してしまうような、あまり情緒的にみられることのない生き物だからだそうだ。

それ以外にも、通訳は沈黙を訳すことはできない、論理構成まで訳すことはできないという指摘も興味深かった。
通訳を使う人が、通訳の限界を知っておくべきだとも。

私の目には通訳にしても、翻訳にしても神業にしか見えないが・・・。
通訳者を養成するメソッドの開発が急務だという話も巻末にあった。
通訳論や翻訳論が、まだそういう状況なのだということも、ちょっと驚いたことだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月12日
読了日 : 2013年8月7日
本棚登録日 : 2013年8月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする