お家さん(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年9月1日発売)
3.98
  • (48)
  • (53)
  • (39)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 502
感想 : 46

つわりによる集中力不足&読書できない症のリハビリ1冊目。
結果的に足掛け3日で上下巻読破の強行軍に。

お、おもしれぇ、とめられない~

時代の空気が実感としてイマイチ掴めなかった空白地帯が埋まった。


     商家             庶民          
明治  曾祖母の広島の実家   赤松さんの民俗学   

大正 『空白地帯』←ここ    大恐慌後小樽に移住した祖父一家       

昭和  華麗なる一族     


神戸の商店として砂糖、樟脳、ハッカから始まった鈴木商店が、ロックフェラーか鈴木よねかと並び称されるまでの大商社になり、大恐慌で破産するまでを描いた大河ドラマ。創業者一族のおよね(=お家さん)を「象徴」としていただき、実働部隊は番頭をはじめとする男衆というところに、古代から連綿と続く日本社会のひな型が現出している。
創業社本体は破産するけど、関連会社がそれぞれ日商(=日商岩井、双日)や帝人などとしてひきつがれていく。

関係者が全般に私利私欲ではなく志で動くこと、
多分鈴木商店独自のDNAが機を見るに敏で新規事業へのスピード感命(=ガバナンスが強固)なところでわくわく感倍増。
「(以前会ったことのある)テイジンの社員さんってなんか自由だよなぁ」という感想は間違っていなかったのかも…

知っているようで知らない台湾併合にまつわるあれこれも新鮮でした。
ちょっとヒロイックファンタジーパートになってたけど、それも含めて当時の感覚が伝わってくる。
米騒動、関東大震災の騒擾も分かりやすく描写されていて、民衆、事業者、政治(官憲)の関係も歴史を経てきたのだな~、という感慨を引きおこす。日本は昔から地震の後にリオットが起きなかったわけではないのね…とかね。

わたしたちは歴史の上に生きている、と感じられることがここ何年かの読書の楽しみなのです…

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 流通網、経済
感想投稿日 : 2017年8月31日
本棚登録日 : 2012年4月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする