砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書 276)

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  • 岩波書店 (1996年7月22日発売)
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初めて岩波ジュニアを読んだけど、なかなか面白いね。ジュニア用だから優しく書いてあって分かりやすい!

この本は何かでオススメされてて知ったけど、モノに注目して歴史を見ていくと、紅茶や西洋美術史、日本史とも絡んで面白い。
読んでいくと、著者は奴隷制度をかなり強く批判していることがわかる。
1775「当世風結婚」(ウィリアム・ホガース)
→上流階級の息子と大金持ちになった承認の娘の結婚
→黒人少年の召使が当時流行
→上品で洗練された文化習慣は、最も野蛮で下品とされた黒人奴隷の犠牲の上に成り立っている


●砂糖の起源
砂糖の原産がどこか未だ不明だが、インドネシアあたりだとされている。
日本には中国経由で奄美大島に伝来。

紀元前4世紀(ヘレニズムあたり?)に、ギリシャの支配がイスラム圏まで広がった時に、ヨーロッパへ砂糖きびの存在が知られる。

●砂糖の普及
7~8世紀(ローマ帝国時代)イスラム教伝播。その際に砂糖も布教者と共に広がる。
特に地中海付近の島々で砂糖きびの栽培始まる。
(キプロス、クレタ、ロドス、シチリア、マルタなど)

●砂糖と奴隷貿易とプランテーション
11世紀末 十字軍遠征 砂糖の運搬路拡大
13世紀 ポルトガル独立
15世紀
1415 アフリカ北岸占領
1442 ヴェルデ岬(現セネガル)到達
1448 バルトロメオ 喜望峰(現南アフリカ)到達
1492 コロンブス アメリカ大陸到達
1494 スペイン、ポルトガルで世界を勝手に二分割
1498 バスコ・ダ・ガマ インド到達
16世紀
1500 ブラジル到達
※奴隷制度のプランテーション活発に
※アントウェルペン市場で砂糖の取引大
1517 ルター宗教改革
1581 オランダ(ネーデルランド)がスペインの統治を否認
17世紀 オランダ台頭 チューリップバブル
1600 イギリス東インド会社設立
関ヶ原の戦い起こる。
1632 日本に出島できる

17世紀後半、ジャマイカではインディオのほとんどか死亡。海賊の棲みかとなる。
当時、私拿捕(しだほ)と呼ばれた、自国公認で他国を襲う海賊が横行。
アメリカ大陸で金を稼いで本土に戻ることを優先したヨーロッパの人々により、当地の教育や環境は無視され、モノカルチャー化がすすむ。

●砂糖とコーヒーと紅茶の文化(17~18世紀)
イギリス…
紅茶に砂糖を入れるスタイルはイギリス起源。
17世紀のイギリスでは、茶葉も砂糖も異国の高価なものなので、ステイタス・シンボルとして両方を使う。
コーヒー・ハウスと呼ばれるカフェで情報交換会や議論が活発に行われる
→コーヒー豆が自領内で取れないため、コーヒーはあまり浸透しなかった。
→紅茶は家庭で手軽に飲むものという習慣ができ、コーヒー・ハウスは衰退

フランス…
植民地で砂糖を沢山作っていたが、ワインを飲む習慣があったため、砂糖は輸出していた。家庭で淹れるのが難しい、コーヒーをカフェで飲み芸術の話をするなどの文化が花開く

ポルトガル
スペイン
オランダなど
こちらもワインがあるため砂糖入り紅茶は流行らず。カカオに砂糖を混ぜたチョコレート(ココア)できる→固形チョコレート誕生。

アメリカ…
17世紀 自分をアメリカ大陸に住むイギリス人と考えている人が多く、イギリス生活様式を取り入れる。
18世紀になって、イギリスが植民地戦争に明け暮れて財政が悪化し、アメリカに対して印税紙(消費税)をかける
→不満爆発でイギリス製品ボイコット運動起こる
→イギリスは茶以外の税を撤廃したが、ボイコット運動でイギリス製品がない生活に慣れたアメリカ人は特に紅茶に執着せず、近場の中南米のコーヒーを飲むようになる。
1773年にイギリスの積み荷の茶葉を捨てる事件ボストンティーパーティー事件起こる

●奴隷制度の廃止と産業革命
18世紀は植民地の覇権争いで戦争多発
→アフリカに植民地をもたないスペインの奴隷供給の地として契約を結ぼうとイギリス、フランス、オランダ、ポルトガルあたりが争う
(植民地百年戦争ともいわれる)
19世紀になると産業革命と共に第二次産業>第一次産業の政策が取られ、黒人に同情する人々も現れる。
1807 イギリス国内で逃亡した黒人召使の無罪判決
「イギリス本国にいる限り、黒人は奴隷ではない」
1833 イギリス奴隷制度廃止

18世紀後半の産業革命で食事文化も変化
→工場勤務には朝から時間を守ってきちんと働く人が必要
→都会の労働者スタイルの変化
→狭くて水道もトイレもない部屋
→薪もパンもお金がないと準備できない
→簡単に作れて直ぐに消化できる砂糖入り紅茶(カフェイン+エネルギー)とポリッジ(オート麦、まずい)の普及

上記の労働者のためには砂糖と紅茶が安くなければならない
→アメリカの砂糖プランテーションの生産者達の権力が強く、フランス輸入モノより高い砂糖を安くしたい
→原価を安くするため、生産者を守るための穀物法の撤廃を工場の経営者から求められる
→砂糖プランテーションを支える奴隷をなくす!

●植民地がない国の砂糖事情
18世紀に砂糖大根(ビーツ)がみつかり、品種改良がすすむ。ロシアやドイツではビート糖の製造で自前で作る。


アメリカの教科書では、奴隷貿易の事を、黒人奴隷ではなく働きに来ていた、と記載している所もあるらしい。
なんだか、今では非難されるであろう昔の出来事をねじ曲げて責任から逃れようとするなと言っているようだ。
貧しい国、と社会の授業で学んだレベルの認識で、どこかで黒人は未発達な文化を持つ洗練されてないイメージを持ってはいないだろうか。
むしろ貧しい国の人と言うことが差別なのではないか。と、ちょっとグルグルする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養・社会
感想投稿日 : 2019年10月25日
読了日 : 2019年10月25日
本棚登録日 : 2019年3月11日

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