新「根性」論 ~「根性」を超えた「今どきの根性」~ (マイコミ新書)

著者 :
  • 毎日コミュニケーションズ (2009年5月23日発売)
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感想 : 8
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先日この本を購入しました。作者の辻秀一先生に目が留まったからです。辻先生は、私が通っていた鍼灸学校に併設されている柔道整復科の講師をしており、一度だけですが、臨床医学総論が休講になったときに、その代講として辻先生が授業をしてくれたことがあります。辻先生のお父様は元外科医で、私たちの臨床医学総論の授業を担当していたので、その代講として息子さんがいらしたという背景がありました。
 さらに鍼灸学校を卒業後数年経ったころ、何気に点けていたテレビで辻先生をお見かけしましたが、それはある事件の体験談を語る医師というニュース映像ででした。その事件とは、フライトシュミレーターマニアの男性が、機長を殺傷して操縦席に入り込んで飛行機を運転してしまうというとんでもないハイジャック事件でした。辻氏はたまたまその飛行機に搭乗していたようで、殺傷されたパイロットの脈を診て死亡を確認したことや、事件が起きたときの機内の状況などを語っておりました。
 一回しか受けていない授業でしたが、辻先生は一つ一つ理屈を積み上げていくような納得のいく、魅力的な授業をしてくれまして、とてもいいん先生だなぁと言う印象が残っておりました。またニュースで事件を語る先生は、とても冷静な視点でしたので、やっぱり信頼できる先生だったんだなぁと感じておりましたので、本屋さんでこの新書を見かけたときに、懐かしくもあり、またタイトルにも魅かれて購入しました。

 と、前置きはこの辺にしておいて、本書の内容です。

 タイトルからも分かりますように、これまであるようないわゆる“すぽこん(スポーツ根性もの)”的な、悲壮感漂う根性至上主義ではなく、それにかわる、新しい根性を考えてみようというものです。
 氏は本書の中で、ある状況や出来事に対して、人が取る思考パターンを四つに分類しています。それは「根性なし」「偽根性」「旧根性」そして「新根性」です。最初の二つは、解決すべき問題に対して向き合うことを避けているので、問題を解決しようとする以前なので、ほぼ除外しています。後者の二つは、問題に対して真剣に取り組もう、一生懸命に努力しようという方向性は同じなのですが、そのアプローチする心持ちが違うという分類です。
 旧根性は「気合い」「苦しさに耐え忍んで」「歯を食いしばってがんばるんだ」という精神状況にあり、耐えることによっていい結果が出ると思っている思考だそうです。それに対して新根性は、自分の心は自分で決めるという信念の元に、思考や表情、言葉や態度と言ったものを常に高い位置でキープしておくことを言っています。

 単純に、思考や表情、言葉や態度が高い位置にあればそれは“好調”と言うのは当たり前で、それが新根性だといっても、新しい価値観の想像にはなっておりません。それができないからみんな困っているわけです。

 そこで本書では、その高い位置とはどのようなものかというのをフロー状態と定義しています。

 フロー状態とは、「揺るぎがなく」「とらわれがない」状態のことを言います。具体的にはどのようなことを指すかは本書を読んでいただくとして、本書の内容を突き詰めていくと、最終的にはこの“フロー状態の維持”をすることが、新根性であると要約されると思います。
 本書には、このフロー状態を維持するための方法論がいくつか載っておりますが、“言い訳をしないこと”“自分自身が選んだ道であると自覚すること”“今に生きること”などが挙げられております。
 これらもまたごく普通といいますか、ごく当然のことと思いますが、実は実際の生活ではあまり意識してできていることではないのかもしれません。毎日のよしなしごとに右往左往し、自分がどこに進んでいるのかわからないことも多く、どんな状況にいるのかも見えていないのかもしれません。だからこそ、辻先生が本書で説くような、ごく当たり前のことをきっちりやっておくことが、結果として自分を向上させる“新根性”になるということなのかもしれません。

 本書は、努力をしているのに一向に向上している感覚がない方や、努力の仕方がわからない方、気持をどう維持していいかわからない方などにお薦めです。辻先生の人柄が表れた好著ですので、とても読みやすく判りやすい内容になっております。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生きるヒント
感想投稿日 : 2010年5月13日
読了日 : 2010年5月13日
本棚登録日 : 2010年5月13日

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