日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで (中公新書 2193)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年11月22日発売)
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本棚登録 : 146
感想 : 17
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筆者の知の総体は底が知れない大きさであることは間違いがないだろう。
だが、中には首を捻りたくなる知識も幾つか含まれている印象。

たとえば『万葉集』の防人歌を貴族の戯作、とされているのは如何か。
選者とされる家持は兵部少輔だった際に、実際に防人たちに接する機会があり、採集の機会があったという。
よってこれらの大部分は防人自身によって歌われていた、というのが定説だったはずである。

こうした曖昧な知識が時折見られてしまうと、我が無知ゆえにその他の膨大な情報もどこまで正確であるか、信じていいのかわからなくなってしまい、ひいては筆者の主張すら怪しく見えてきてしまう。

また、少々話がそれがちで、概念図を書こうとしない限り論旨が見えにくく、結局私には「恋愛至上主義はもてない男を無視している」以上の主張が読み取れなかった。
もう少し論点を整理して書いて欲しい。

##以下を書き直しました##

筆者の読書量は驚嘆に価すると思う。
だが他の方もレビューで指摘されているように、中には不正確なものも多く含まれている印象。

中でも『万葉集』の防人歌を貴族の戯作である、と断言しており瞠目した。
選者とされる家持は兵部少輔だった時に、実際に防人たちに接する機会があったと聞いている。
これらの点から、これらは防人自身によって歌われていた、というのが定説、と私は大学の日文科で習った。

こうした曖昧な知識が混ざっていると、作者の主張を支える膨大な知識のどれも疑わしいものに思えてしまう。

また、少々話がそれがちで、論旨が見えにくく、結局私には「恋愛至上主義はもてない男を無視している」以上の主張が読み取れなかった。

この点、本書を著者のいう、“学説”とするには少々無理があるだろう。根拠が不正確で、何を言っているのか分からないからである。

読者としてはひとつひとつの批判点を整理して書いて欲しい。

(また197頁後半は、文章として何を言いたいのか分からなかった。ここは特に修正を頂きたいと思っている。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 近代文学
感想投稿日 : 2013年7月31日
読了日 : 2013年7月31日
本棚登録日 : 2013年7月31日

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コメント 3件

tonton1965さんのコメント
2014/06/14

防人歌については再検討します。「瞠目」は感心した時に使う言葉です。197pは、いったい何が?「ふぞろいの林檎たち」を知らないと分からないかもしれませんが、『もてない男』に詳しく書いてあると思います。

あるぷさんのコメント
2014/06/16

> tonton1965様
コメントありがとうございます。
197頁については少々お待ち下さい。現在手元に貴著が無いため、再読してご返答させてください。
「瞠目」についてですが、たしかに『日国』には〈目をみはること。見て驚き、感心感動すること〉とありますが、『現代日本語書き言葉均衡コーパス 少納言』を検索する限りでは、必ずしも「感心した時に使う言葉」ではなかったのではないか、と存じます。
ともあれ、暫しのご猶予を賜りたく存じます。

あるぷさんのコメント
2014/07/06

> tonton1965様
該当箇所、確認いたしました。
ご指摘の通り、私が『ふぞろいの林檎たち』を見ていないことが文章を読みにくく感じた原因かと存じます。ただ、それを踏まえてもやはり該当項の第2パラグラフの最後の文の後半、
〈……疎んじられて離婚を迫られているという古風な背景があり、最後は、母親に対して断固として妻を擁護する小林を、若者たちが見て「私もこんな恋愛したいママ」と感動する筋書きである。〉(2012/11/25発行初版)
の箇所の、〈こんな恋愛〉とは何かがよくわからず、かつ本筋(「学歴が理由でモテない」という認識)とは微妙にずれている、と存じます。
よろしくお願い致します。

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