執筆当時26歳の社会学者(東大大学院博士課程在籍)が、若者の一人としての当事者目線で書いた若者論。昨年9月の刊行以来、すでに10刷を重ねているという。ベストセラーといってよいだろう。
仕事の資料として読んだものだが、たいへん面白かった。若者論としてのみならず、幸福論としても秀逸な一冊である。
大学院生が書いた本などというと生硬で青臭い文章を思い浮かべそうだが、著者の文章は軽やかで読みやすい。若さに似合わず力の抜き加減まで心得ていて、力みがない。26歳にしてすでに物書きとして完成されている、という印象。
タイトルは、いまの20代の7割が、世論調査で「現在の生活に満足している」と答えた(2010年時点)という事実をふまえたもの。
格差社会化が言われ、上の世代からは不幸で不遇な世代と見なされがちな若者たちが、じつは大人が思うよりもずっと幸福を感じて生きているというアイロニー。その背景にあるものを、著者は各種データと自らの生活実感、そして多くの若者たちへの取材から探っていく。
読んでいて痛快なのは、過去から現在までの若者論の数々を、筆鋒鋭くバッサバッサと斬っていくところ。
私は、著者がこきおろした本の一つ、原田曜平の『近頃の若者はなぜダメなのか』も優れた若者論だと思うし、首肯できない記述もあるが、おおむね同意。
逆に、感心しなかったのは、ワールドカップで盛り上がる渋谷の街を取材したくだりなど、実際の若者たちの声を集めたルポ的な部分。論評部分は鋭いのに、自らの取材成果を記した部分になると途端に精彩を欠く印象を受けた。
とはいえ、一冊の本としては上出来。若者にとっても元・若者にとっても、一読に値する好著である。
- 感想投稿日 : 2018年10月27日
- 読了日 : 2012年3月16日
- 本棚登録日 : 2018年10月27日
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