共同通信配信で2009~10年に新聞連載されたルポに加筆し、識者へのインタビューをプラスしてまとめたもの。著者2人は共同のベテラン記者だ。
全4章立てで、各章が高校編、中学校編、小学校編、保育編となっている。
貧困問題をめぐる多様なケースが取り上げられている。たとえば小学校編では、母子家庭、父子家庭、両親が揃ってはいるが雇用不安定で貧困に陥ったケースが、それぞれ登場するという具合。
この手のルポを読むと、「苦しんでいる親と子どもが多いのはわかったけど、じゃあどうすればいいの?」と、モヤモヤした読後感を味わうことが少なくない。
しかし本書の場合、章の最後に置かれた貧困問題のエキスパートへのインタビューで、問題への対策・処方箋が(ある程度)語られている。
インタビューイとして登場するのは、東大教授の本田由紀、福島大教授の大宮勇雄、それに当ブログでも著作を取り上げた阿部彩、生田武志の計4人。
また、ルポの中には苦しむ子どもを救おうと懸命に努力する教育者(定時制高校の担任教諭、保健室勤務の養護教諭、保育園の園長など)たちの姿が活写されていて、読んでいて救われる思いがする。
教育現場で広がる「子どもの貧困」の問題を考えるうえで、有益な良書である。
本書の中で複数の登場人物が、「日本における子どもの貧困問題は見えにくい」という趣旨の発言をしている。
たしかに、途上国のようにストリート・チルドレンがいるわけではないし、貧困家庭の親や子どももケータイをもっていることが多いし、ユニクロ等のファストファッションが普及しているから、貧しくてもそこそこオシャレな服装ができる。見た目からは貧困の苦しみがわかりにくいのだ。
そのじつ、日本の「子どもの貧困」は、リーマンショック以後急速に深刻化しているのである。
- 感想投稿日 : 2018年10月24日
- 読了日 : 2012年7月17日
- 本棚登録日 : 2018年10月24日
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