バッシング [DVD]

監督 : 小林政広 
出演 : 占部房子  田中隆三  加藤隆之 
  • GPミュージアムソフト
3.30
  • (3)
  • (6)
  • (15)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 45
感想 : 12
3

 カンヌ映画祭コンペティション部門への出品で話題をまいた、2005年の小林政広監督作品。

 2004年のイラク日本人人質事件をモチーフに、人質から解放された女性が帰国後、社会から激しいバッシングを受けるさまを描いている(ただし、事件についての描写は皆無。登場人物のセリフの中にわずかな言及があるのみ)。

 想像していたよりもずっとよい映画だった。
 小林監督(脚本も)の視線は主人公の女性に同情的ではあるものの、彼女を「純真無垢でいたいけな被害者」として扱ってはいない。バッシングする側を悪、される側を善とする単純な二元論に陥っていないのだ。
 監督の眼目は、一連のバッシングを通して日本社会そのものを浮き彫りにすることにこそあるのだろう。

 海外の観客からは、「なぜ人質事件の被害者がバッシングに遭うのか、その理由がわからない」という感想が多かったという。さもあろう。しかし日本人なら、是非はともあれ「彼女がバッシングに遭った理由」はよくわかるはずだ。英訳不可能な「世間」という枠組みの意味合いを体で理解していないと、理由はわからないのである。
 その意味でこの作品は、“映画の形式をとった日本人論”として優れている。

 ヒロインを演ずる占部房子(うらべ・ふさこ)は、私の好みど真ん中の「地味で華奢な植物系美人」(私は派手な美人、肉感的美人が苦手だ)。
 ただし、ほかの映画ではチャーミングな彼女なのに、本作ではほぼ全編スッピンで、かなりブス顔に映っている(失礼!)。いつもとは別人のようだ。しかし、ものすごい熱演ではある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本映画
感想投稿日 : 2019年3月31日
読了日 : 2009年6月16日
本棚登録日 : 2019年3月31日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする