深町秋生のノワール小説『果てしなき渇き』を、『告白』『下妻物語』の中島哲也が監督した作品。
原作を読んだときにも読後感の悪さに驚いたものだが、映画版は原作にも増して不快な作品。
ただ、その不快さはいわゆる「イヤミス」(後味悪いけどクセになるミステリー)系のそれであって、ねじれた魅力に満ちており、最後までグイグイ引き込まれる。
全編、暴力とエロスに毒々しく彩られた作品。なのに、CM出身の中島哲也はあたかもCMのようにポップで美しい映像で暴力とエロを描き出しており、そのギャップが不思議な酩酊感をもたらす。
豪華キャストの中でも、主演の役所広司とその娘役の小松菜奈の存在感が抜きん出ている。この2人のためにあるような映画だ。
役所広司は、正義のヒーローや無難な善人の役だけ選ぼうと思えばできる立場なのに、あえてこんな汚れ役を引き受けるところが素晴らしい。アメリカならハーヴェイ・カイテルあたりが演じそうな、ぶっ壊れた元刑事役なのだ。
まあ、1996年の『シャブ極道』では、「ワシが日本中をシャブで幸せにしたる」なんて言う役をいきいきと演じていた人だから……。人畜無害なお茶の間俳優に収まるタマではないのだ。
小松菜奈は、スチルで見るとやや不気味な印象だが、映像で見るとまさに「魔性の美少女」で、本作のヒロインにピッタリ。
役所広司と小松菜奈の怪演・熱演を味わうためだけにでも、観る価値のある作品。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本映画
- 感想投稿日 : 2018年10月7日
- 読了日 : 2015年4月3日
- 本棚登録日 : 2018年10月7日
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