ドローン・オブ・ウォー [DVD]

監督 : アンドリュー・ニコル 
出演 : イーサン・ホーク  ブルース・グリーンウッド  ゾーイ・クラヴィッツ  ジェイク・アベル 
  • ポニーキャニオン
3.20
  • (2)
  • (18)
  • (15)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 82
感想 : 20
4

 ドローン(無人航空機)を使った対テロ戦争を描いたイギリス映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』がメチャメチャ面白かったので、同じ題材を扱った先行作品(2014年)を観てみた。

 こちらの監督は、『ガタカ』で知られるアンドリュー・ニコル。

 『ガタカ』は、遺伝子操作技術が極限まで進歩した未来社会を舞台に、自然妊娠で生まれた若者の孤独な闘いを描いた名作であった。
 アンドリュー・ニコルの作品は、『ガタカ』に限らず、着想・着眼点とその巧みな展開のさせ方が抜群だと思う。
 「ヴァーチャル女優」が実際に人気女優となってしまう『シモーヌ』も、現代の武器商人をブラック・コメディ仕立てで描いた『ロード・オブ・ウォー』も、脚本のみを担当した『トゥルーマン・ショー』も傑作だった。

 ただ、自分の持ち時間(=寿命)が通貨のようにやりとりされる未来社会を描いた『TIME/タイム』(2011年)だけはアイデア倒れの駄作で、「アンドリュー、初めて外したな。枯れちゃったかな」と思ったものだ。

 以来、なんとなく遠ざかっていたため、彼の作品を観るのは久々である。
 
 『アイ・イン・ザ・スカイ』よりも一歩早くドローン戦争に材を取った映画を作るあたり、時代の先端を鋭く切り取るアンドリュー・ニコルの嗅覚はまだ衰えていない、と思わせる。

 エンタメとしての完成度は『アイ・イン・ザ・スカイ』のほうが上だと思うが、この『ドローン・オブ・ウォー』も十分に面白い。

 『ロード・オブ・ウォー』の監督が作った映画だからということで安直にこの邦題がつけられたのだと思うが、原題は「Good Kill」。殺人を伴う任務が完了した際、「グッジョブ」みたいな感覚で用いられる、「一掃した」を意味する軍隊用語だ。
 そして同時に、米空軍の兵士たちがエアコンが効いたコンテナの中で、1万キロ彼方にドローンを飛ばして人を殺す行為を、苦い皮肉を込めて表現する言葉でもある。

 時に民間人をも巻き込み、ドローン爆撃による対テロ攻撃をくり返すうち、主人公は少しずつ精神の平衡を失っていく。そのプロセスが、サスペンスとアイロニーの中に描き出される。

 「21世紀の戦争」の闇を暴く佳作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アメリカ映画
感想投稿日 : 2018年9月22日
読了日 : 2017年11月29日
本棚登録日 : 2018年9月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする