若松プロの映画作りの現場を、早逝した紅一点助監督・吉積めぐみの視点から描いた青春群像劇。
若松孝二になんら思い入れのない当方から観ても、なかなか楽しめた。
門脇麦が演ずる吉積めぐみを主人公に据えたことは、正解だと思う。かりにこの映画から彼女を差し引いてしまったとしたら、なんともむさ苦しい映画になったことだろう。
足立正生、秋山道男、荒井晴彦、大島渚から赤塚不二夫に至るまで、若松プロとその周辺にいた人々が続々登場し、ゴージャス。
1960年代末から70年代初頭にかけての、熱い「政治の季節」の東京を描いた映画としても、みずみずしい。
若松孝二が晩年に撮った作品『11・25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』で三島由紀夫を熱演した井浦新が、本作では若松孝二を演じている。今回も魂のこもった熱演である。
タイトルは当時の若松プロの面々から大不評を買ったらしいが、私はけっこう好きだ(昔、暴走族の写真集に同題のものがあった)。
門脇麦の熱演が素晴らしい。「何者かになりたいが、何者にもなれない」表現者の卵――その焦燥や痛々しさまでも表現して出色だ。
白石和彌監督の前々作に当たる『サニー/32』は世にもクダラナイ珍作だったが、それでも、あの映画でも門脇麦だけは光っていた。
あと、サニーデイ・サービスの曽我部恵一が手がけた音楽(最後に流れる主題歌「なんだっけ?」も歌っている)がとてもよい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本映画
- 感想投稿日 : 2019年4月5日
- 読了日 : 2019年4月5日
- 本棚登録日 : 2019年4月5日
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