自己評価の心理学: なぜあの人は自分に自信があるのか

  • 紀伊國屋書店 (2000年9月1日発売)
3.72
  • (25)
  • (27)
  • (40)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 498
感想 : 30
4

自分の自信のなさはどこからやってくるのか、
どうしたら自信をつけられるのか知りたくて、本書を読みました。
著者たちの元を訪れる患者のエピソードを交え、
自己評価が低い人の特徴や、自己評価が低くなる要因、
どうやって自己評価を高めていけるかについて、書かれています。

自分はどんな人間で、自分のどこが好きでどこが嫌いか。
自分自身を評する「自己評価」は、
「自分を愛すること」「自分を肯定的に受け取ること」「自信を持つこと」
これら3つの価値観が土台となって形成されていくものだ、という前提から、
話が進んでいきます。

自己愛、自己肯定感、自信、どれも同じような言葉に見えて、
それぞれ別の価値観かつ、相互に深く影響し合う考え方です。
どんな強み・弱みがあっても自分をありのまま受け止め、
失敗してもいつか立ち直ることが出来ると確信し、
どんな状況であっても自分を愛することが出来る。
こうした心の安定が整うことで、
人はあらゆる事に挑戦し、失敗を受け止め、
また行動を積み重ねて、自己評価を育むことが出来る、といいます。

自己評価は、日常における様々な行動や小さな成功によって維持され、
高められるものですが、そもそも、自信がなければ
人は行動することが出来ません。
「自信」は自己評価のための重要な土台であり、
物事の捉え方や自己理解を正しく行うことで、身につけていけるものだ、
というのが、本書で特に注目する点かと思います。

どういう物事の捉え方をすれば良いかは、
本書の11章で9つのテクニックを紹介しています。
個人的にも取り組みたいと思えた内容だったので、備忘録として以下に記します。

・自分の長所、短所、能力、限界を知る。
・その上で、自分を受け入れる。
・自分の中にある否定的な感情をちゃんと認め、状況に忍従しない。
 自分の本当の思いを押し殺さない。
・行動して、自分の得意分野を伸ばす。
自分が夢中になれることに取り組んで、
能力が上がれば、自ずと自信が付いて自己評価も上がる。
・自分を批判する心の動きに敏感になり、打ち消す言葉を心の中に持っておく。
「よくなかったよな」「駄目だったな」と感じた時点で自分にストップをかける。
 具体的な解決策や学びに繋がりそうにない、苦痛な批判にしかならないなら、
 自己批判及び悩むのはやめる。
・成功・失敗の2元論で物事を見ない。失敗は誰にでもあり、
 学びの宝庫でもあるので、悪いこととしてとらえない。
・自分を抑えすぎるとストレス増大。我慢せず、自己主張も行う。
・人の立場、気持ちを理解することに努める。
 共感性は、他者との結びつきを強め、後に述べる社会的サポートの一助にもなる。
・社会的なサポートを持つ。
 家族、友人、知人、医者・・様々な支えの存在がおり、
 最終的にどうしようも無くなったら、他人を頼る手があるということを知る。

このような自己内省的な取り組みを通し、
自分がどのような人間で、どんなことをストレスと感じるか知ることで
ストレスコントロールが出来るようになるのかな、と感じました。
また、
「自己評価の低い人は、自分のことを知らない
(自分の能力や性格を知らない)せいで、何らかの問題にぶつかっても、
解決策が自分の中にあるとは思えないため、
他の人がどうするか見極めたりして時間がかかってしまう。」
という一節も含め、
1つ目に挙げた、自分の長所、短所、能力、限界を知るという点は、
特に重要だと思います。

私自身、これまで、失敗や損することが嫌で悩むだけで終わったり、
何かしら理由をつけて決断出来ないことが多く、
「慎重な性格だから」、「大人しい自分だから」と見過ごしてきました。
でも、人や周りに合わせることで自分は本当は何をしたいのかわからなくなり、
行動できずどんどん自信がなくなり、
失敗で自分が傷付くことを恐れるあまり、
「失敗する自分」を当たり前のように想定する癖もついてしまいました。
(セルフハンディキャッピング効果、というそうです)
自分が慎重で物事を決めるのに時間がかかること、
人の意見に左右されがちなことを、「性格だから」と看過せず、
自己評価の低さが影響している行動では?と問いかけてみて、
改めて自分のことを振り返る必要があると感じました。

そもそも、何故自己評価の高低差が生まれてしまうのかについては、
幼少期の環境や親との関係性が深く関っている、というのは通説であり、
本書でも述べられているとおりです。
ただ、他の主張と違うと感じたのは、
「自己肯定感は子供の時の影響だけで決まるものではなく、
大人になってからも恋愛、仕事、勉学など様々な場面で変化し、
また、状況に応じて安定にも不安定にもなるもの」という点です。

どうにかしてトラウマから抜け出したいと思うのに、
親を理由に自分の自信の低さを正当化してしまう。
過去に引っ張られ続けることに、長年苦しさを感じておりますが、
人によってハンデはあるものの、
誰もが状況と人間関係次第で高低差が変わるものなのであれば、
自分にもまだ努力余地はある、と勇気付けられました。
基本的には、自分のように自信がない患者のエピソードが
だいぶライトに取り入れられ、論拠となる話もだいぶ端折られているせいか、
こういった耳が痛い話も、だいぶポジティブに読み進めらることが出来ます。

他にも、自己評価の低い人の特徴に関する話は、
まさに自分、といった内容ばかりでした。
特に、「空想、妄想する人が多い」にはギクリとさせられました。
自分の心を守るためには必要な行為だけど、
空想の世界の理想が高すぎると、今度は現実とのギャップに打ちのめされ
行動のハードルが上がってしまう、という内容には頷かざるをえません。
自分の日々の何気ない行動が、色んなチャンスを逃していたのかもしれません。
本書で挙げられていた「中間目標を持つ」テクニックは、
小さな工夫なのですが、私のように空想の世界に逃げがちな人間には
取り入れやすい行動だと思います。
理想の一歩、二本手前の小さな目標を日々積み重ねていく、
というものですが、
大きな要素(理想、目標)を小さな要素(日常の取り組み)に分解し、
自分に出来ることから取り組んでいく、という行いは、
自己評価の低さ高さに関わりなく、誰もが取り入れるべきテクニックだなと
感じます。

特段難しいことは書かれておらず、
「言われてみれば、確かに大事だよね」ということが沢山書いてある本書、
図書館で借りましたが、自分のお守りのように家に置いておきたい、と
思える内容でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 内向型・HSP・メンタル系
感想投稿日 : 2021年11月25日
読了日 : 2021年11月25日
本棚登録日 : 2021年11月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする