幽霊―或る幼年と青春の物語 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1965年10月12日発売)
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自伝的小説。幼少期をありのまま、皮膚感覚が蘇るくらいねっとり描く。姉、母、父、その喪失。忘却に沈んだ記憶をたぐる。ばあや、叔父、従兄。自分と境遇は違うけれど、なぜか懐かしさを感じる。その具体性が魅力。遊び、会話、植物、昆虫、心情の変化。おかゆに残る梅干しの赤。そこに読むものを引っ張っていく力がある。序盤が特に良い。家族を失い、病気を患い、ばあやとも死別。戦争。糸が切れた凧のように山を歩き、自然の中で自分と向き合う。心理学的に研究できそうな深みがある。後半は思春期に入り、少女への渇望と羞恥心の狭間で揺れる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月3日
読了日 : 2022年12月3日
本棚登録日 : 2022年12月3日

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