新樹の言葉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1982年7月27日発売)
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本棚登録 : 939
感想 : 67
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「懶惰の歌留多」「春の盗賊」「俗天使」などを読んで、何かに似ているなあ?なんだったっけ?としばらく考えたのち、あぁ談志の落語だ!と思い出した。枕がやたらと長いの。
太宰も落語好きで影響を受けているらしく、また談志師匠も太宰が好きだったとか。

だいたい同時期に書かれた「走れメロス」(新潮文庫)の短編を表ベストだとすれば、この「新樹の言葉」はシングルのB面集といったところか。他の作品を読んで面白い、太宰は好きだなと感じた人は「新樹の言葉」は面白いと思う。初めて読む人は「走れメロス」をどうぞ、という感じ。

安定期に向かう、当時の太宰の苦悩が長い枕の部分に吐露されている。ここがいちばん面白い。

苦悩はしているが暗いわけではなく、「新樹の言葉」「愛と美について」など心温まる家族愛の話や、「花燭」「八十八夜」など不器用な主人公のラブストーリー、女性とのふれあいを描いた話も。「懶惰の歌留多」はあいうえお作文でハライチみたいに太宰がノリボケし続ける。バラエティに富んでいて、太宰好きには欠かせない一冊。

落語…落伍…人間失格…とは些か早計か。お後がよろしいようで。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年10月5日
読了日 : 2012年10月5日
本棚登録日 : 2012年10月2日

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