著者 :
  • 集英社 (2008年11月26日発売)
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感想 : 384
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この人の小説は、流れの激しい川のようだ。島にきた大津波で、三人の子供と、三人の大人は奇跡的に助かった。山の上から見える海に飲まれた自分たちの村には、光などどこにもない。家族を失い、バラバラに大人になった三人に、希望の光はいつさしはじめるのだろうか。彼らはいずれも不幸せで、そして愛が歪んでいる。父親に虐待されていた輔は、兄のように慕っていた信之に異常な執着心を見せる。そして信之は、美しい顔を持ち、島にいる間関係を持ち続けた美花の全てを愛す。ただ美花は…誰でもいいのだ。彼らの思いはすれ違い、相手に真意を伝える術もなく、醜く歪み、そして嫌な結末を迎える。作者の作品でも最も暗いと聞いた本作だが、読みはじめからとても嫌な予感が漂っていた。その空気は物語の結末周辺まで漂い、彼らを飲み干していった。彼らには絶望しかないように思えるがそうではなく、それぞれの光があった。輔は全てを終わらせてほしかった。信之は美花の願いならなんだって聞き届けたかった。美花は誰にでもいいから愛され、幸せに見える生活を送れるならばそれでいい。希望の光の形は、三人にそれぞれの形で叶ったのだ。こちらから見て、悲しみにしか溢れていない光でも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年2月10日
読了日 : 2014年2月10日
本棚登録日 : 2014年2月10日

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