中庭の出来事

著者 :
  • 新潮社 (2006年11月29日発売)
3.19
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本棚登録 : 1212
感想 : 208
5

ぱらぱら見ると台本がちらほら目に入り、なんとなく読むまで時間がかかってしまったが私にはとんでも本だった。

『木漏れ日~』の後に読み出したので、同じような隠されている印象にまたかと思ったのだが、謎を追いかけていくという点で第三者である読者が置いていかれるのは同じでも、まったく別の要素で見せられた。

一人の男の死にまつわる謎を、台本、旅人、中庭とあらゆる視点から追いかけていく。何度も同じようなシーンが繰り返されるが、何所かしら違うことに気付く。また同じ話なのに出て来る女優3人が性格によって受ける印象が違うのも当然ではあるが魅力的だ。特にラスト、それぞれの女が選んだ作品がまさにらしさが出ていておもしろい。さらにそんななか、飽きさせない小話がまたなんとも珍妙でぐいぐい引き込まれる。

ミステリでよく真実を問われるが、この劇は観覧者の望み通りの真実を叶えられる。お望みの真実を語ると女優は云う。果たしてどれが現実なのか、はたして現実とはなんなのか。あやふやな虚構で踊らされているのが自分だけだったと気付いた時には、それこそ拍手を送りたくなった。

あまり評価が高くないため人を選ぶ実験的要素もあるかもしれないが、最後の一幕まで楽しませて戴いた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2015年7月29日
読了日 : 2015年7月27日
本棚登録日 : 2015年7月29日

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