リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門

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  • 毎日新聞出版 (2015年6月16日発売)
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前半は、いわゆるリベラリストと呼ばれる人達の欺瞞を明快に暴いていて、彼らが信用できない理由が良く分かりました。
社会正義の実現を目標とし、それを主張する人間には、ダブルスタンダードとタダ乗りは許されないという事ですが、
彼らの独善性は周知のとおりです。

憲法9条を巡る問題も、法理論を突き詰めて考えると明らかに自衛隊は違憲であり、その存在に対する賛否を明確にしない以上、安保法案に対して違憲だ合憲だと言っても解釈論をしているに過ぎず、意味がない。ならばいっそ9条を削除して民主的な議論の下で国民的な合意を作り上げていった方が良いのではないか、という主張も理解できます。

後半は、自分の理解力の欠如からやや難解に感じますが、ロールズやサンデルに対する批評となります。
理論的な思考を重ねていくと井上先生の正義論に辿り着くのかもしれませんが、では現実とどのように折り合いを付けていくのか?という視点は希薄に感じました。
学者先生にとっては現実は関係がなく、むしろ邪魔な事実かもしれませんが、その点は少し物足りなく感じました。

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感想投稿日 : 2016年10月7日
本棚登録日 : 2016年9月21日

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