ロカノンの世界 (ハヤカワ文庫 SF ル 1-5)

  • 早川書房 (1989年5月31日発売)
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本棚登録 : 201
感想 : 12
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 はるかな未来の宇宙、フォーマルハウト第二惑星。高度な知能を有する生命体が、複数の種族存在する星。
 その惑星に、全世界連盟から派遣された調査隊。通常の手段では、連盟の人々に通信が届くまでに八年もかかるような辺境の星で、平和的な調査のためにやってきたはずの彼らは、突然の攻撃にあい、隊長のロカノンを残して全滅してしまった。
 連盟に仇なす勢力が、この未開の地の一種族を利用して隠れ蓑にし、兵力を固めようとしている。そのことを知ったロカノンは、通信手段を求めて、いまだ知られざる辺境の地を、命を賭して旅をする……。

 これまで読んできた同じ方のほかの本に比べたら、最初が少しとっつきにくい感じはあったのですが(あと登場人物がちょっと多くて、自分の記憶力のなさに失望した)、中盤以降、ぐいぐい引っ張られて読みました。

 風虎という、翼の生えた虎さんを乗り物に、空を飛んで移動する場面が多いんですけど、そこが個人的にツボでした。天馬じゃなくて、虎なところが。ロマンですよね(力説)
 途中、とても神々しい姿をした人種が登場するんですけど、外見は美しくて神秘的なのに、知能や行動パターンが昆虫のような感じで、そのギャップにすごくぞぞっとしました。

 序盤から逆境に置かれ、それを挽回できる可能性は、敵の手中にある装置だけ、という苦しい状況から始まるストーリー。まさに苦難の旅、という感じなのですが、作品全体に通じる悲しみというか、徒労感のようなもの、やるせない感じが好きです。

 闇の左手、所有せざる人々などの、ほかのSF作品と、基本の世界観を共有している作品でもあります。
 この方の本は引き続き、ちょっとずつ集めていこうと思っています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(海外/女性作家)
感想投稿日 : 2011年3月2日
読了日 : 2011年2月7日
本棚登録日 : 2011年2月7日

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