もしかすると人生の辻褄は合うのではないのか。
そんな考えが入り込んできているようだった。
『スローターハウス5』に登場した、あらゆる悲惨な出来事に対しただ淡々と「そういうものだ」と呟き続けるビリー・ピルグリムと対になったかのような人物は今作にも存在する。しかしそれは単に脇役としてだ。
主人公は、出来事に対して、ときおり神の存在を信じてもよいような気がしていて、それは「そういうものだ」の認識との間で揺れ動く。あらゆる悲惨な出来事も、単に「そういうもの」であり、そこにはどこか超越した地点からの意味付け(=神)などなく、すべては無意味。人生に辻褄が合うなんて発想はあり得ない。
今までこんな風に語られていたものが、この『ホーカス・ポーカス』では、そんなある種の達観した地点から、人間的なものに戻っていったように思えた。
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- 感想投稿日 : 2013年1月18日
- 読了日 : 2012年12月29日
- 本棚登録日 : 2012年12月29日
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