四十九日のレシピ

著者 :
  • ポプラ社 (2010年2月16日発売)
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本棚登録 : 3078
感想 : 614
5

伊吹有喜さんは初読みの作家さんだった。
『四十九日のレシピ』
可愛い装画とあらすじの続きが気になり手に取ったが、これが大当たり!もの凄く良かった!!
久しぶりに何度も温かい涙が溢れた。

【内容】
妻を亡くしたばかりの良平の元を訪れた「井本」という黄色い髪の娘は、妻が遺した「四十九日のレシピ」の存在を教え、生前の妻から四十九日あたりまでの諸々の面倒を頼まれていたという。
この「四十九日のレシピ」には亡き妻 乙美の料理の数々に、日々の暮らしの掃除・洗濯・美容といったエトセトラが、自作のイラストと共にカードでリング式に綴られていた。
ちなみにレシピには処方箋という意味もあるという・・・

一方、東京で義母と夫婦で暮らしていた良平の一人娘 百合子は、夫の浩之の浮気が発覚し、あろうことか相手の女性が妊娠しているという。相手の女性 亜由美は2人に離婚を迫り、百合子は今後の人生の岐路に立っていた。


【感想】
後妻である乙美に素直に愛情表現を出来ていなかった良平が、不器用だけど温かくて実直で、これぞ昭和のお父さんだなぁと思った。
百合子がまだ2歳の時に病死した前妻の死後、再婚を全く考えていなかった良平に会いに来た時の乙美が意地らしくて愛おしかった。きっと妻になった後も、乙美の良平を慕う気持ちは色褪せること無く、百合子への愛情もたっぷり注いでいたのだろう。なんてったって、「ダーリン熱田」と「ユリっち」なのだから。

そして少女達のシェルター施設であるブルーリボンでの乙美の存在は、彼女達の人生を前に進める大きな力になったに違いない。作中で触れられた「テイクオフ・ボード」の話には、思い当たる節があり私も勇気づけられた。

一方、東京で暮らす百合子の置かれた境遇には、何度も胸が詰まり張り裂けそうになった。同じ立場だったら、きっと生まれて来る子と、父親になるチャンスを得た夫の為に、私なら新しい道を選ぶだろうと思う。夫婦の不妊治療を経た後での事情だけに、深刻さが一層迫って来る。
でも夫婦のことは夫婦にしか分からない。結論を出す前に、お互いがきちんと本音で話し合う時間が絶対に必要だろう。こういうのを避けて通ると、後々絶対皺寄せが来るんだよなぁ。

本作では、避けて通れない辛い場面に向かう時、一緒に寄り添ってくれる井本や、さりげなく気遣ってくれるハルミの存在がじわじわ響いた。実生活でも、こういう存在って貴重だ。仮に姿が無くても、胸に思い出せる存在がいることで乗り切れる時だってある。
ラストで良平が川岸で一人ごちる場面で涙腺崩壊。こりゃダメだ、外出先じゃなくてホッとした。

釣りの出かけに乙美が作ってくれた大好物のコロッケサンドを、弁当袋にソースがしみているからと、意地を張って持たずに出掛けた良平。
「カバンが汚れる。いらない」
弁当の包みを手にして、乙美は寂しげな顔をした。
それが生きている妻を見た、最後だった。

はぁぁ〜リアルだ、切ない。
生きていると、時として前触れなく、最後の別れが訪れることがある。
だからせめて家族の行ってきますの際には愛情たっぷりのキスと抱擁、友人との別れ際にはハグまたは握手♪
いつの頃からだろう・・・
過去の経験からこんな文化を実践している私
ふふふっ、結構いいもんですよ。
欧米か!?笑

余談だが、声が大きくて怒鳴っているように聞こえる良平に対して、井本が教えてくれたヒントには目から鱗だった。
「語尾にニャンとかつけると
 誤解されなくていいかも」
「ニャンがイヤなら、ダベはどう?」
私も夫婦喧嘩でこじれそうになったら、この案を採用させて貰おうと思う。
きっと喧嘩が阿呆らしくなって仲直り出来るに違いない。そうなればこっちのもんなのだ。
なのだ?どっかで聞いたような笑

温かな読後感で、気持ちが晴れて来るような余韻に浸ることが出来た。
本当に素晴らしい作品に出会えた。
是非、伊吹有喜さんの他の作品も読んでみようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月19日
読了日 : 2024年2月19日
本棚登録日 : 2024年2月9日

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コメント 2件

hibuさんのコメント
2024/02/19

はなちゃんさん、こんばんは!
四十九日のレシピ、素敵な作品ですよね!
伊吹さんの作品ですと、「風待ちのひと」もいい作品ですよ♪
ぜひ、手に取ってみてください^_^

はなちゃんさんのコメント
2024/02/20

hibuさん、こんにちは!

いつもお世話になっております
「風待ちのひと」ですね♪
嬉しい情報をありがとうございます
また楽しみが1つ増えました(*´꒳`*)
どんどん読んで頭の整理が追いつかない私…
本当ブクログさまさまです笑

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