([お]5-2)喋々喃々 (ポプラ文庫 お 5-2)

著者 :
  • ポプラ社 (2011年4月6日発売)
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本棚登録 : 3560
感想 : 376
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四季折々の生活風景、着物や日本の文化をとても丁寧に描いた作品だった。
そこへ栞の春一郎に対する純愛模様を重ねているんだけど、実はこの関係は不倫。春一郎は既婚者なのだ・・・

先ず、小川糸さんが不倫を題材とした作品を扱っていることに驚いた。もし小川さん初読みであれば、避けた方が良い作品だと思う。それ位、好みが分かれそうな作品。

物語全体を通して、栞の日々の丁寧な生活ぶりと、奥ゆかしさすら感じる春一郎への恋心が、一つ一つ言葉を選び、実に丁寧に綴られている。不倫じゃなければ、物語の世界観とマッチするんだけれど、美しい描写に非道徳的な恋愛模様がそぐわない。無理に美しく描こうとしている様な妙な違和感を感じた。

ラストは正直な所、あやふや過ぎて私の好みではなかった。春一郎の薬指の変化だけで察するなんて、勝手過ぎるだろうと呆れた。しかも会えなくなって1ヶ月・・・お互いの将来を考えて行動するには、期間が短すぎではないか。
読後は、2人の未熟さにモヤモヤ感が消化不良となり、沈殿してしまった。

舞台となる東京の下町風情溢れる谷中は、数年前に谷中銀座界隈を散策したことがあったので、街並みを思い出しながら楽しく読み進められた。根岸に現存する老舗酒場の『鍵屋』には、是非夫婦で行ってみようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月11日
読了日 : 2023年10月11日
本棚登録日 : 2023年10月5日

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