副題に「演義から正史、そして史実へ」がついています。1800年前の出来事を史実としてどのように浮かび上がらせるのかというと、中国の王朝が書き連ねてきた正史(「正」統な歴「史」)とその他の作品との比較という手法をとっています。この分析の仕方が、歴史学の点から三国志を分析した点で学術的側面がものすごく強く、ゲームや漫画、小説ではわからない部分を充足させてくれる知的満足感があります。
著者(参考:三国志検定HP→http://www.3594kentei.com/message/column01.html)自身も吉川英治の『三国志』から入っているので、きっかけは小説ですがそれが学術的、歴史学的に何が本当なのかを極めた結果の一部がこの本に結集しているように感じられます。特に、個人的に初めて知ることができた点で印象深かったのは…
・正統・閏運・僭国(魏呉蜀三国の定義)
・魯粛による天下三分の計(天下三分は孔明の策ではないのね)
・名士対君主の根深さ(階級制度とせめぎ合いの構図)
・法治と寛治(二種の統治法)
・陰陽五行説と五行相生説(この点からアジアや日本を見るとすごく面白い)
などなどです。横山光輝(http://www.yokoyama-mitsuteru.com/)の漫画から出発した私の三国志好きですが、それが演義発の物語であるならば、史実は何であるかを知ることもまた面白かったのです。日本の統治制度や行政制度に反映されたさまざまな制度も出てきます。勧善懲悪や、忠義・仁義の貫徹など、日本人が好きなものだけに収まりきらないドラマがこの本から読み取れると思います。
今まで自分が抱いていた感想の下になった漫画のストーリーとは別のものを見せられました。これまで以上に新しいことを知ることができて、さらに惹かれるものがあります。限りなくハマって惹かれ続けることのできるのも三国志の凄さなのかもしれませんね。そういえば、最近では中国ドラマの『三国志 -Three Kingdoms-』(http://www.sangokushi-tv.com/index.html)が放送されてますね。やはりいつになっても手を変え、品を変えながら描き続けられるのでしょうね。
- 感想投稿日 : 2012年5月7日
- 読了日 : 2011年6月5日
- 本棚登録日 : 2011年6月1日
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