タテ社会の人間関係 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1967年2月16日発売)
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一度の失敗で人生の決まる単線的社会から、働き方、学び方、暮らし方が複線化された社会に変わっていかなければならない。こうした社会環境の変化を阻害しているのが本書が指摘する「タテ社会」である。「職場あっての自分」というように場の共通性によって構成され、集団は枠によって閉ざされた世界を形成し、成員の感情的全面参加により、一体感が醸成されて集団として強い機能を持つ。感情的全面参加はエネルギーを結集することができても、個別的で多様性に欠け、論理性に乏しいため合理的な展望を描けない。共通の場に立つものや同じ空気を持つものにしか通じない。
組織は硬直的、閉鎖的なものではない。これからは流動性が高まり、もっと自由なものになる。雇用関係の有無さえとはない。協力、連携、パートナーシップを含む多様なつながりとなる。雇用のあり方はコスト・オンリーの経済的視点から少子高齢化や情報化社会など社会的視点で規定されるようになる。
正社員にこだわるのはもうよそう。労働者は自らを雇っている組織よりも長生きするようになる。安心は雇用から生み出されない。幸いにしてあらゆる仕事が高度化し、人と人との共同作業によって行われるようになった。分業が促進された組織は人の強み、得意分野を動員して、弱みを意味ないものとする。「みんな同じじゃなきゃ気がすまない」終身雇用前提のタテ割り分業ではなく、それぞれの得意分野を磨くことによって、掛け合わせるヨコ割り分業を進める。分業によってお互いを必要とし合って生きることで共同性の回復が図られ、安心感のある社会に変わっていける。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2015年3月4日
読了日 : 2015年3月4日
本棚登録日 : 2015年3月4日

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