『やせれば美人』という新潮文庫での面白い奥さんのダイエット日記以来、私はこの人の書く文章のファンです。
沖縄基地問題、オウムや統一教会のような新新興宗教信者、地域通貨、その他いろいろな問題を実際に現地に行って現地の人に訊いてみる。言ってみればこれだけのことなのですが、これほどの現地の人のナマの声を引き出している本も珍しい。
反対派、賛成派、賛成なんだけど反対派ありがとう派、TVの報道で流れるある種単純な切り分けがいかにうさんくさいものかを炙り出してくれるのですが、著者の「困った、困った」という声が聞こえてきそうな途方にくれた文章がまたよし。
TVの政治討論番組の類が大嫌いなのだが、あのなかでも「国民は許しませんよ!」と、いかにも自分が国民の代表みたいな顔して言う男がいるけれど、あんたのいってることがどんだけ嘘にまみれていて誇大妄想に過ぎないのか、というのをこの本を読んで自覚してほしい。
主義主張、信仰、思想、こういった厄介なテーマに関する本は、「そうなのかもしれないけど、あなたの書きぶりにも辟易する」という著者のバイアスがかかっていることが多いが、そのバイアスを持ち得ないままに困惑しつつとぼとぼと取材してまわるこの人の書きぶりは、きわめて好感が持てます。自分がどう考えるかまでいたらなくても、まず疑問を持つところからでいい、ぜひ読んでみてください。
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カテゴリ:
評論系
- 感想投稿日 : 2009年9月27日
- 本棚登録日 : 2009年9月27日
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