猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1951年8月25日発売)
3.71
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本棚登録 : 2062
感想 : 240
5

akikobbさん、111108さんにおすすめしていただいて。

面白かった!
字が小さい文庫しかないんだよなあと敬遠していた作品だったけれど、文字サイズなんて読み始めてすぐ気にならなくなった。

とにかく猫のリリーが気まぐれさも含めて可愛く、いじらしく、翻弄されてしまうのも無理ないと思うほど。
キュートでワガママな女(今回の場合は主に雌猫)に振り回されたいという谷崎先生のフェチが、本作でも詰め込まれている。

品子も庄造も、人間のごたごたのせいでリリーを振り回してしまっているのをかわいそうに思ううちに、「誰にもまして可哀そうなのは自分ではないか」という思いに駆られるように、猫と比べて人間の滑稽さが際立つ。 

特に庄造。ラストシーン、2人の女から逃げ回って、なんとか猫に遊んでもらおうとする姿は情けなすぎるけれど愛すべき腰抜けという感じで、おすすめいただいた時の「庄造はある意味可愛い」というセリフの意味がわかった(笑)
こういう男に執着しちゃう2人の女の気持ちも分かる。
情念に翻弄される卑俗な姿こそが、人間らしさなのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月31日
読了日 : 2022年8月31日
本棚登録日 : 2022年8月31日

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コメント 3件

111108さんのコメント
2022/08/31

ロッキーさん、こんばんは。

ふふふ、読まれましたね。
そうなんですよね、猫のリリーが一番かわいくて賢いと思います。女達はそれぞれの思惑で動くので素直に可愛いと思えないし。とにかく庄造はほんとにしょうもない奴と思ってしまいました。
でもロッキーさん言うように谷崎先生のフェチを考慮すると、書いてて快感だったのかもですね。

akikobbさんのコメント
2022/09/01

ロッキーさん、111108さん、こんにちは。

ロッキーさんのレビューを読んで、勢いで私も再読してしまいました。こんなに短いのにこんなに楽しめるなんて、素晴らしい…。

今回はロッキーさんのおっしゃった「人間の滑稽さが際立つ」「谷崎先生のフェチ」に、大納得しながら読みました。人間たちの思惑は、谷崎さんのだらだらした美文で、わかりすぎるほどわかってしまって、狡さ、可愛さ(?共感ですかね?)、滑稽さなどいろいろ感じますが、物言わぬ猫のリリーだけは、仕草や眼で発するのみ。読者もそこにズキュンとやられてしまうのかもしれませんね。

ロッキーさんのコメント
2022/09/01

コメントありがとうございます!
お二人のおかげで読まず嫌いを克服し、素敵な作品に出会うことができました!

111108さん
確かにリリーは可愛いけど、人間を超越して賢い感じがしましたね。
人間はほんとにしょうもなすぎて笑
谷崎先生も楽しんで書いた作品だったかもしれませんね。

akikobbさん
おお、再読されたのですね!薄い本ですが、濃くて満足感ありますよね。
物言わない猫が1番しっかりしているのを読むと、人間の業を感じますね。
でもakikobbさんのおっしゃる通り、そんな人間側の思惑もわかりすぎるほどわかるので、自分もどうしようもなく人間なんだなあと思います。

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