冒頭「昭和七年」の文字を見て戦慄が走った。物語は5.15事件の後のようだが、明らかに「血盟団事件」とシンクロする。政財界の腐敗に怒り、皇道の救いを夢見て昭和維新に目覚める。しかし物語では、そんな一途な飯沼勲の暗殺計画を、愛する者たちの密告によって未遂で終わらせ、逆に皇道を踏みにじる者を殺させ、自害させる。これは時の井上日召や菱沼五郎に対する三島の思いを重ね、「本当はこうして欲しかった」という妄想と、その後の昭和の進むべき道を強く暗示させたかったのではないか、と理解した。
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- 感想投稿日 : 2015年8月22日
- 読了日 : 2015年8月22日
- 本棚登録日 : 2015年4月25日
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