アルファベットが 4文字並んだ奇妙なタイトルに惹かれて手に取った一冊は、しかし、中身はもっと奇妙だった。
タイトルは Himmlers Hirn heißt Heydrich (ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる)の意味。Heydrich はナチス・ドイツにおいて親衛隊(SS)を率いたヒムラーの片腕として、「金髪の野獣」「第三帝国で最も危険な男」「プラハの死刑執行人」など数々の異名を持つ男、ラインハルト・ハイドリヒのことで、彼がこの小説の最も重要な登場人物の一人。彼をプラハの街角で暗殺すべく、イギリスからプラハにパラシュート降下した 2人(3人?)の若者が、また別の最も重要な登場人物。
ここまで書くと、ハラハラ、ドキドキのスパイ小説を期待させるが、しかし、著者の筆は極めて冷静で、歴史とは何か? 歴史小説とは何か? 歴史小説には、どこまで小説(虚構)が許されるのかを自問自答しながら、物語はゆっくりと、極めて静かにクライマックスへと向かう。教会での銃撃戦シーンは 2008年の虚構として描かれ、ここだけが著者の創作が少なからず入った箇所だと暗示される(しかし、大半は史料に基づく)が、このパートが無ければ歴史書と呼ぶべき一冊だっただろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年8月11日
- 読了日 : 2016年8月9日
- 本棚登録日 : 2016年8月11日
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