米原万里にオススメされてはいたものの、その厚さにビビッて手が出ていなかった一冊。たまたま図書館で見掛けて、返却期限をモチベーションに読了。しかし、そのボリュームをまったく感じさせないほどの面白さで、ほとんど一気読みだった。
文章自体は決っして巧くはないし、香港返還という世界史的大事件をテーマにしているにしては、背景の分析も歴史的事実の評価も甘く、資料的な価値は薄い。しかし、この本には、返還前もその後も、香港に恋して、香港の人々を愛した、率直で素朴な文章が詰められている。特に、喫茶店でたまたま見かけた美男子に対する想いと、ついにその想いを吐露する瞬間の描写は、女性らしいファンタジーと香港らしい風景が交差する素敵なシーンだ。香港で出会ったカップルを撮った表紙写真も素晴しい。
まあ、本としては贔屓目に見て星 4つくらいではあるのだが、たまたま、今の自分の境遇と、転がり続ける香港の中でたくましく生き続ける人々の描写がマッチしてしまって星 5つ。どんな本にも出会うべき時期というものがあるものだが、もし、この本が自分の背中を押してくれたのだとしたら、自分にとって人生で最も大切な一冊になることだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2016年2月12日
- 読了日 : 2016年2月12日
- 本棚登録日 : 2016年2月12日
みんなの感想をみる