息子夫婦から邪魔もの扱いされ、老人ホームに送り込まれる老女マリアンの一人称ナレーションで語られる、実に楽しい小説らしい小説。
序盤は、いかにも老人らしい突飛な連想と、耄碌したとしか思えない(しかし、ストーリーを追うのが辛くならない程度に)脈絡のない筋運びが、人生を達観したマリアンの老境をいきいきと描いて秀逸。老人ホームの食堂に飾られた妖しい尼僧修道長の正体を明らかにする作中作あたりから物語は不思議な色を帯びはじめ、やがて世界に地軸変動による天変地異が訪れて、いつの間にかあのほのぼのとした老人ホームは、聖杯、7人の魔女、大釜、蜜蜂、人狼、箱舟などが跋扈する完全な幻想小説の世界へ。年老いた女性の霞がかかったような一人語から、同じく霞がかかった幻想世界へのトランジションが見事だ。
著者のレオノーラ・キャリントンはシュールレアリズムの画家としても有名な人らしいが、さもありなん。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年3月15日
- 読了日 : 2014年3月15日
- 本棚登録日 : 2014年3月15日
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