なんで今ごろ江戸川乱歩という感じだが、横溝正史からの昭和初期推理作家つながりで読んでみた。乱歩と言えば、小学生時代に(子供向けに編集されたバージョンだったのだろうか)怪人二十面相の類を読み漁った記憶があるが、エロ・グロ・ナンセンスの時代背景を反映した大人向け小説はおそらく初めて読んだ。
表題作の「陰獣」は、トリックこそ単純(他にない、という感じで半分も読み進めないうちに判ってしまう)だが、乱歩自身をモデルにした大江春泥の描写と、「屋根裏の遊戯」「B坂の殺人」「パノラマ国」などの自己パロディが楽しい。静子のマゾヒストっぷりは、今読んでもドキッとするほどなので、当時としてはかなりショッキングな描写だったのだろう。
併録されている「孤島の鬼」も佳作。世間的には「陰獣」の方が評価が高いようだが、個人的にはこちらの方が気に入った。「密室殺人」「公開殺人」という両極端なトリックをあざやか(でもないか…)に実現する前半もそこそこ読めるが、やはり秀眉は岩屋島に乗り込んでからの冒険譚。手に汗握るとはこのことで、終盤は一気読み。プロットが破綻気味で筋が一貫しないのは、連載小説にはありがちな欠点として眼をつむる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年5月24日
- 読了日 : 2014年5月24日
- 本棚登録日 : 2014年5月24日
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