白人女性をヒエラルキーの最上階に頂く社会に飛び込んだ、日本人青年とドイツ人女性の顛末。女性に奉仕する畜人の詳細な飼育方法、価値観が描かれる一方で、部外者であった二人が徐々に調教されていく様も精緻に描かれる。展開は、やがて神話世界とのかかわりを明らかにしながらも、中途で終わる。
広く言って、これはSFに属する話であると感じる。現実に入り込む異端を描く幻想小説ではないし、サドマゾ小説でさえない。筆致は詳細であり、その世界の成立の根源を極めて科学的に描こうとしているという意味で、SFがもっとも近い。
といって、では同じく独自の神話世界を生み出したラヴクラフトのようなものかというと、これもまたまったく異なる。ラヴクラフトにおいてはあくまで神の世界は神の世界として存在していた。
だが、こちらのほうでは、神の世界は存在しない。むしろ神の世界は人間の世界だった、というネタばれ話であり、徹底的に分解され解説された神話読解本とも言える。
この小説がグロテスクであるとするなら、おそらくそれぞれの人間の心変わりと、潜在的な支配欲求を白日の下にさらし、書き尽くそうとしているところなんだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
novel
- 感想投稿日 : 2013年8月7日
- 読了日 : 2013年8月7日
- 本棚登録日 : 2013年8月7日
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