”久々に読んだ小山昇さんの本。やはり痛快だった。
日本経営品質賞を2回受賞した株式会社武蔵野を率い、今では経営サポート事業として他社を指導・支援する役割も…。論理と感情の両面に目配りしつつ、やらざるをえない仕組みに落としこんで実行する強さに、あらためて凄い!という尊敬の念が湧いた。
本書で紹介された考え方やノウハウは、業種や規模を問わず取り入れられることが多々ある。特に、自組織に取り入れて実践したいと思ったのは以下の項目。
・人間の感情を理解したうえでしくみを作る
・5年で売上2倍 → 毎年15%の売上増が必要 → 新しいこと(手法、事業)をはじめる
・社員教育は、同じ道具をつかって、幹部と社員がいっしょに学ぶ
・販売促進費は、お客様の数を増やすため、売れている商品をさらに売るため、売筋商品の売れ損じを防ぐため、につかう
・行動を起こさせるために「数字」で示す → リードの話
・人材配置はバランス悪く
・売上も仕入も経費も、「率」ではなく「額」で考える
え、「うちではできない」って?
いやいや、真似できるもの、エッセンスを取り入れられるものはあるはず。やるべし!
<キーフレーズ>
・「お客様の数」「事業の数」「社員の数」、これらの「数を増やす」のが社長の責務であり、そのための事業活動を「経営」と呼びます。(p.006)
※それができなければ…
★つまり、人間は、「感情的に、そうしたいと思ったときにのみ、動く」、そういう生き物だということを、理解したうえで「会社のしくみ」を作らなければなりません。(p.012)
※これを言い切れる経営者は強い。
・武蔵野が「経営サポートをしている企業」の方々を集めて行なう「経営計画書作成合宿」では、参加される社長に、「5年後に売上を2倍にする長期計画」を立てていただきます。
これは、かなり大きな目標です。なぜ、「5年後に売上2倍」なのかといえば、「いまと同じやり方では会社は成長しない」ことに気づいてもらいたいからです。(p.043)
※5年で売上2倍 → 毎年15%の売上増が必要 → 新しいこと(手法、事業)をはじめるしかない
・「会社のルール(規則、規定、方針など)」や「目指すべき明確な数字(事業構想、経営目標、利益計画など)」を落とし込んだ「道具」を持たない会社は、進むべき方向性が見えないため、「場当たり的な経営」に陥ってしまいます。(p.052)
・社長の仕事は「正しくなくてもいいから、早く決定すること」です。「数字」は早く決めるのが正しいのであり、「根拠も正当性」もいりません。(p.061)
・「人は回数をこなすことでしか学べない生き物」なのです。(p.065)
※お、ここにもヒト感フレーズ!
・「ウィン・ラスベガス・ホテル」では、「良いこと」をする際に「かかったコストをどのように回収するか」を決めていたのです。(p.078)
※武蔵野の基準と違うところだった。いまでは次の順にお金を使うとのこと。
「お客さまに喜ばれていること&成果を上げていること」
→「成果が出ること」
→「良いこと」
・「いつも楽しくなければ、会社ではない」。これは私の持論です。(p.086)
★赤字続きの会社であれ、「現実・現場・現物」でよく見れば、「自社を良くするヒント」は必ず転がっています。社長がそれに気づかないでいるのは、社長室にこもって、「現場を見ていない証拠」です。(p.096)
★自分だけ勉強する社長は、「うちの社員はバカだ」と言いはじめますが、バカな社員を作ったのは、ほかならぬ「社長」なのです。
社員教育は、社長と社員が「同じ道具(経営計画書など)」を使って、同じ現場に立って、一緒に勉強したほうがいい。時間と場所を共有することでこそ、「価値観の共有」につながります。(p.134)
※社長が「角のタバコ屋のお姉さんは美人だ」と教えてはいけない。社員を現場に連れて行って「ほら、美人だろ」と確認させる。= お互いの価値観のすりあわせ、体験の共有
※※これ、いい事例だ!(^.^)
・バスウォッチング(p.155-)
- 大型バスを貸しきって、全営業所を視察する勉強会
- 年8回開催。社員・パートタイマーは、必ず1回は参加が必要
- 幹部社員が引率と説明
- 見学途中で「気づいたこと」「勉強になったこと」「実践したいこと」を各自が発表
- 終了後、その日のうちに「全営業を回って気づいたこと」を「50個」書いたレポートを提出
1個足りないと1,000円の罰金。1日提出が遅れると1,000円の遅延金
→ 頭を振り絞って50個書く → 50個気づく感性が養われる
→ 1年前に自分が書いたレポートを見比べて、成長を知ることができる
※これ、すごい仕組み化!
・給料体系勉強会(p.157)
「10年後の自分の給料」を試算させながら、「どうすれば給料が上がるのか」を学ばせていきます。
※当然仕組みも伝える
・環境整備(掃除)は、人材教育と組織改善の基本となるしくみです。床を磨く。トイレを磨く。蛍光灯を磨く……。環境整備は、やればやっただけ成果が見えますし、成果が見えるからこそ「やれば、できる」という手応えを感じることができます。(p.186)
・整理整頓は経営の極意。整理は「戦略」に、整頓は「戦術」に通じる(p.186)
★販売促進費は、
・「いま売れている商品を、さらに売るため」
・「売れ筋商品の売れ損じをなくすため」
に使うのが正しい。(p.200)
※およよ…。
※そして、平均値ではなく、最頻値(もっとも多く分布している値)で判断する。
・わが社では、お客様アンケートを年1回行っています。次のアンケートをとるときには、「前回のアンケートを参考にして、社内を改善した点」を載せており、<後略>(p.209)
・ライバルは、「なんとしても勝たなければいけない相手」です。それなのに多くの社長は、「ライバル会社の場所」も「ライバル会社の戦力」もわかっていません。これでは、勝てるわけがない。(p.213)
・人は小さなことでもいいから、「感謝の気持ち」を受け取ると、やる気になるものです。武蔵野が導入している「エナジャイザー」という診断ツールによると、「約50%の人が、褒められると頑張る」という結果が出ています。(p.269)
★月末に、
・「部下との同行回数」
・「部下と個別に飲みに行った回数」
をメールで上司に送らせ、「部下とのコミュニケーションチェック」という表を作成します。気持ちや口だけで「部下と、もっと飲みに行け」と言ったところで、人はなかなか行動しません。人が具体的に行動を起こすには、表を作って「数字」で示させるべきです。(p.276)
※こういう感情をとらえた仕組み化がうまいよなぁ
★武蔵野では、「定例の業務以外の稟議(3,000円以上)」は、すべて社長が決裁します。稟議書を見た瞬間、私はすぐに判を押します。(略)
経費は、いくら使ってもいい。けれど、使っても利益が出なければ、賞与が減ります。
経費は、「粗利益額を増やすこと」と、「お客様の数を増やすこと」に使う。そのことがわかっている社員は、「効果が出ないこと」に無駄な経費を使うことはありません。(p.283)
・「基本給は年功序列」で決め、「手当は役職」で決め、「賞与は成果」によって決める。(p.304)
※給与はお客様が、賞与は社長が支払う → 感謝を教える義務
・武蔵野の場合、成果を上げられない社員が長々と残業をしていたら、賞与が減ります。「定時で帰って成果を上げる社員」にたくさん賞与を上げて、「年収」の総額を上げる。そうすれば、成果を上げている社員が辞めることはありません。(p.317)
★賞与の評価では、「業績評価点」「プロセス評価点」「方針共有点」「環境整備点」の4つの項目で評価しています。(略)
多くの会社では、「嫌なこと、面倒なこと、やりたくないこと」を社員はやりません。でも、やらないのは社員が悪いのではなく、「やらざるを得ないしくみ」を作らなかった社長が悪いです。(p.323)
※これだ!
・武蔵野では、賞与をだれがいくらもらったか、課長職以上は実名で公開しています(一般社員は、A評価は実名。B評価以下は、評価と点数のみ公開)。公開することで「自分が何番目にいるか」がわかります。
また、賞与は現金で渡していて、部長と課長の中で「賞与の額がもっとも少なかった社員」は、ほかの社員のボーナスの「袋詰め作業をする」のが決まりです。(p.324)
※悔しさをモチベーションにつながる。事実、2回連続で袋詰めをした社員はいない、らしい。
・2:1の法則(p.331)
「能力のある(実績のある)社員2人」と、「能力が少し劣る古参社員1名」を同時に昇格させる。(p.331)
※すべての社員が希望を持てるように。
★A評価以上の社員ばかりの営業所では、B・C評価に落ちる可能性があるため、気を抜きません。反対に、B・C評価ばかりの営業所では、「このメンバーなら自分も頑張ればA評価がもらえるかもしれない!」と考え、仕事に打ち込みます。
仕事ができる社員と、仕事ができない社員を競わせても意味がありません。バランスの良い人材配置は、会社の停滞を生むだけです。(p.333)
※これは目から鱗!!
※人材雇用はバランス重視。人材配置はあえてバランスを悪く。
★私は、「クセや欠点のある社員」を積極的に昇進させています。「可もなく不可もなく」の社員を長に据えると、会社は弱くなります。なぜなら、「人間は、クセや欠点を取り除くと、バイタリティーがなくなる生き物だから」です。(p.338)
※おー、ここにもヒト感フレーズが!!
・武蔵野の社員は、賞与をもらった際、奥さんに全額手渡す社員は、その後、出世していません。総務では、賞与袋を1,000円で売っています。社員は新しい袋を買って、金額を書き換えて、奥さんに渡す。(p.340)
※おー、これは!\(^o^)/
・売上も仕入も経費も、経営は「率」ではなく「額」で考える(p.352)
・私のもとには、毎日「135(93)」といった数字がメールで届くようになっています。
この数字は、毎日の現金残高。単位は100万円。つまり、「前月の同日には、現金の残高が9300万円あった。今月は1億3500万円ある」という意味です。
※前月同日との比較。なるほど!
・販売促進費…お客様が増加することに使う。武蔵野では「使わないと叱られる経費」です。1年後、使った金額だけ粗利益額が増えていればよい (p.396)
※お客様に知られなければ、売上や利益につながらない!という信念
<きっかけ>
本屋で手に取り、この強さ・一貫性が必要じゃないかなと思ったので。”
- 感想投稿日 : 2019年8月15日
- 読了日 : 2014年6月7日
- 本棚登録日 : 2019年8月15日
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