レヴィ=ストロ-ス入門 (ちくま新書 265)

著者 :
  • 筑摩書房 (2000年10月19日発売)
3.32
  • (11)
  • (29)
  • (74)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 737
感想 : 53

”レヴィ=ストロースは、哲学から構造主義、構造人類学へとテーマを移した、フランスの現代思想家、人類学者。
著書に『野生の思考』『神話論理』『親族の基本構造』などがある。

本書は、小田亮さんによる解説本。

<読み取ったメッセージ>
●均質化や単一文化はあやうい。多様性が大事
●間接的コミュニケーションではなく、顔の見える関係での身体性・相互性のやりとり(真正な社会様式?)が大切

<キーワード>
構造主義、構造人類学、哲学の放棄、新生な社会、想像の共同体、〈顔〉の見える関係、「たった1つの社会のみを考慮する」ことの弊害、均質化によって文化の多様性・複数性が消滅

<抄録(抜き書き)>
・人類学(アンソロポロジー)は「エントロピーの学(エントロポロジー)」でしかない

★レヴィ=ストロースが線を引いているのは、(略)国民国家のなかのネイション(国民あるいは民族)やエスニック・グループ(ネイションのなかの民族集団)などのように、間接的コミュニケーション(書物、写真、新聞、ラジオ、テレビなど)によって結ばれている大規模な共同体の非真正さと、個別の顔のみえる関係による小規模なローカル諸社会の真正さとおあいだである。(p.27)
 ※真正さの水準

・「単一文化、というのは無意味です。そのような社会はかつて存在したことがないからです。すべての文化は撹拌と、借用と、混合から生まれたものです。そして、そのテンポは違っているでしょうが、有史以来そのことは変わりません」 (p.33)

・真正な社会様式において、断片を思いもかけぬやり方で多様性を増大していくときにはたらいている思考こそ、レヴィ=ストロースのいう「野生の思考」であり、その他の文化の断片との対照によって自己の姿を創り出したり変えていくということは、神話の構造分析によって明らかになる神話的思考としての野生の思考の特徴なのである。(p.39)

★レヴィ=ストロースは、構造主義の〈構造〉をつぎのように定義している。「『構造』とは、要素と要素間の関係からなる全体であって、この関係は、一連の変形[変換]過程を通じて不変の特性を保持する」。(p.46)
 ※体系と構造の違い。

・要素も要素のあいだの関係もすべて変化しているにもかかわらず、そこに現れる「不変の関係」という不思議なものが〈構造〉ということになる。(p.48-49)

・レヴィ=ストロースにとって、構造人類学は、他社の理性に自己を開く方法だった。(p.75)
 ※ヤーコブソンの音素の三角形。レヴィ=ストロースの料理の三角形。これこそが構造!

・「基本構造」と呼ばれているのは、「あるタイプの親族との婚姻を規定づける体系であって、社会のあらゆるメンバーを親族あつかいしながら、それらを配偶可能なる人びとと配偶を禁じられた人びととの2つのカテゴリーに分別する体系」である。(p.78)
 ※交叉イトコ婚。『親族の基本構造』であつかったもの。自然から文化への移行。

★レヴィ=ストロースは、近代の思考が特定の時代と文化に特殊な思考であり、野生の思考こそ人類に普遍的な思考であることを、個々の諸事例に共通する論理的な構造を抽出することによって示した。(p.125)

・ブリコラージュは、(略)限られた持ち合わせの雑多な材料と道具を間に合わせで使って、目下の状況で必要なものを作ることを指している。(p.135)
 ※部品ではなく断片。「まだなにかの役に立つ」という原則によって集められ、保存された要素

・ブリコルールの用いる記号とエンジニアの用いる概念との違いの一つは、「概念が現実に対して全的に透明であろうとするのに対し、記号の力はこの現実の中に人間性のある厚味をもって入り込んでくることを容認し、さらにはそれを要求することさえあるという所にある」(『野生の思考』) (p.139)
 ※記号と概念。感性と理性

・この戦術という概念は(略)「自分にとって疎遠な力が決定した法によって編成された土地、他から押しつけられた土地でなんとかやっていかざるをえない」ような行動であり、「所有者の権力の監視のもとにおかれながら、なにかの情況が隙きをあたえてくれたら、ここぞとばかり、すかさず利用する」といったように、固定された固有の場所などもたず、真正な社会に生きるゆえに、融通の利く「弱者の技」としてのブリコラージュ的な機略を指している。(p.153-154)
 ※レヴィ=ストロースは、戦略よりも戦術推し。★意外! 理性よりも完成ってこと。

・こうした操作は、あらかじめ考えられた計画どおりに運びません。私の仲介で、神話がそれ自体で再構成するからであって、私はただ神話群が通りすぎていく場であろうと務めるだけです(p.206)
 ※神話の構造分析について。『構造主義との対話』より。

・真正な社会様態とは、すでに顔見知りの人びとからなる閉じられたローカリティとは異なる。それは、はじめて出会う人とのあいだの関係を〈顔〉のある関係として結ぶことだり、これからも出会うことのない人たちや死者との関係も〈顔〉のある関係として想像することを意味している。(p.230)

★私というものは、何かが起きる場所のように私自身には思えますが、『私が』どうするとか『私を』こうするとかいうことはありません。私たち各自が、ものごとの起こる交叉点のようなものです(p.235-236)
 ※p.206神話のページに出てくる。

<きっかけ>
2018年3月の人間塾課題図書。お題もあわせて考え中。”

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: -
感想投稿日 : 2019年8月15日
読了日 : 2018年3月11日
本棚登録日 : 2019年8月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする