”僕にとって5冊目の森信三先生の著書。教えの中の共通項(躾の3原則、3つの健康法)が滲みこんできたのを感じると同時に、改めて感じ入る内容も多かった。
特に、「夫婦は一つの楕円ではなく、半分くらい重なった二つの円」はうまい!と思ったし、日常のやりとりから「ミニ・コンミューンづくり」を、の主張も大いにうなづけた。
巻末の「期待する男性的人間像」と「あるべき父親像」は重なる部分が多い。1つ違うのは「民族の運命」や「人類の将来」への関わり方について、父親は家庭内のわが子を通したアプローチになっていることだろう。(子どものいる立場の人は)まずわが子を通じて、さらには自身が関わる次世代の人たちへ良きものを遺していけるよう、もがきつつも自らを磨き続けていきたい。
#いつかはこの文章をわが息子が読む日がくるだろう。「言っていることとやってることが全然違うじゃん!」と言われないように(笑)。
<読書メモ>
・では家庭における父親の役割は何かというに、それは人生の見通しと社会的視野の広い立場に立った人生の生き方に基づき、家庭のあり方と子どもの育て方に対してその根幹となり、その方向を明示すべきでありましょう。(p.9)
★この地上へ派遣せられた自らの使命感の自覚は、人生の二等分線??四十歳前後??を越える頃であり、しかもそれは、「死」の寸前まで深められねばならぬ。
#人間学の骨子8項目の1つ(?)。
・世界観・人生観は、人それぞれに生涯を賭けて、探求し深化せねばならぬわけであります。そして古今の卓(すぐ)れた先賢先哲に学びつつ、それを深省し、浄化しつづけねばならぬと思うのであります。これが「人生観」の深省と浄化といえましょう。(p.27)
・要は、自分の体に合った健康法を突き止めて、生涯それを実行するのが大切だと思います。(p.77)
#森先生の3つは、半身入浴法、無枕安眠法、飯菜別食法。
★夫婦というものは、二つの中心を持つ一個の楕円ではなくて、それぞれ中心を持つ二つの円が、互いに半分くらい重なり合った二つの円のようなものでありまして、二つの円の重なった部分だけが相互理解が可能な部分であって、他の部分は、お互いに理解できない部分だということを、改めて知る必要がありましょう。(p.105)
#これは深い。お互いのすべてを理解できる(理解してもらえる)と思ってはいけないのだ。理解できない部分が多いと思うことが大切。
・「女を見る眼」「男を見る眼」の参考条件を、それぞれ年頃の息子や娘にそれとなく日常会話のついでに種蒔きをしておくことも、大切なことではあるまいかと思うのであります。(p.124)
#内容もさることながら、参考条件、それとなく、種蒔き、というアプローチがよさげ。
★われわれは、一体どうしてこのような世俗的な雑事の重圧を切り抜けられるか??ということが問題になるわけですが、しかしそれは原則的には実に簡単明瞭であります。それは「すぐにその場で片づける」ということであり、「即刻、その場で処理して溜めておかない」ということこそ最上の秘訣であって、おそらくこれ以外には、いかなるコツも秘訣もないといってよいでしょう。(p.169)
#あ?、耳がいたい。雑事にちょっと悩み、溜めてしまうがゆえに、大事に手をつける時間を減らしているんだな…。
★文章力の練磨の上から大いに役立つという利点もありますが、何といっても最大の効用は、人と人との絆を大事にし、開かれたるミニ・コンミューンづくりに、大いにその効力を発揮すると思われるのです。このミニ・コンミューンとは、極めて小さな意識共同体でありまして、平たく申せば小さな仲間づくりということであります。しかも開かれたるミニ・コンミューンは、会費いらず、したがって出・入自在の開放的な仲間という程度のものでありまして、これが今日、巨大な組織や通信網を擁するマス・コミに対して、わたくしどもの今後あるべきささやかな主体的な一種の抵抗姿勢であると同時に、真に心の通う仲間づくりなのであります。(p.172)
#もとは「ハガキの活用」について語られた文章だが、facebook 等でのやりとりもこれに通じそう。開かれたるミニ・コンミューン!
★「ではわたくしの期待する男性的人間像とはどういうものか」(p.203-)
<内面的立場から>
第一 自己の本文を忠実に果し、義務と責任を重んずる人
第二 行動的叡智をもって主体的に仕事に取り組む人
第三 人間的情味が厚く、至純にして清朗な人
<外側の立場から>
第一 自分一人で判断のできる人間に
第二 人々と強調のできる人間に
第三 真摯にして実践的な人間に
第四 常に国家社会と民族の運命について考える人間に
第五 さらに世界人類の将来についても思念する人間に
・あるべき父親像(p.213-)
一、父親自身が確固たる人生観を持ち、柔軟にして強じんな信念の持ち主でなければならぬ。
人生の先達とし、一家の大黒柱として、常に叡智と識見を磨くことを怠らないよう。
一、父親はまず一事を通してわが子に忍耐力を育てる躾けをすべきである。
これは日常の起居動作をはじめ共同作業やスポーツや学習等のいかんを問わない。
一、父親は、平生は泰然として、あまり叱言をいうべきでない。
古来卓れた父親は、わが子を一生に三度だけ叱るというが、これくらいの構えが必要。
一、父親は、イザという時、凛乎たる決断と俊敏な行動を示すものでなければならぬ。
一、父親自身が自らの「生活規律」を持ち、これを厳守するものでなければなるまい。
<きっかけ>
人間塾 2013年2月の課題図書。
→塾での発表で、息子への手紙について宣言。卒業式の日に手渡せた。”
- 感想投稿日 : 2019年8月15日
- 読了日 : 2013年2月13日
- 本棚登録日 : 2019年8月15日
みんなの感想をみる