里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川新書)

  • KADOKAWA (2013年7月11日発売)
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NHK取材班の取材に基づく「マネー資本主義」の補完としての「里山資本主義」について書かれたルポルタージュに、藻谷氏のデータ的な裏づけ・意味づけが加えられた形の本。
頻出する「マネー資本主義」という言葉の正確な意味については、同じくNHK取材班による『マネー資本主義』(http://booklog.jp/item/1/4101283729)を参照する必要があると思われる。

中国山地を始めとした日本でも経済的衰退が激しい地域を舞台とし、お金でモノを買う、お金でお金を買う、お金だけで生きていく、といった生活と異なった生活があることを、個人単位で実例を挙げて紹介している。
人口減少地域が「日本の最先端」であることは、山崎亮『コミュニティデザインの時代』(http://booklog.jp/item/1/4121021843)などでも触れられていて、特に新しい主張ではないけれど、その最先端地域での生活モデルを具体的に紹介しているのが良い。

一方で、良い点ばかり取り上げすぎな感もある。例えば病院への通院とか、山村・島の生活で起こりそうな問題については書かれていない。
とはいえ、本書の中で「里山資本主義」的な手法により、空家を利用したデイサービス事業から、レストラン事業と保育所を自分で作ってしまい、それで雇用まで生み出したという紹介があったので、「小さな地域における社会的な課題は自分たちで解決可能」という考えがベースかもしれない。
『コミュニティデザインの時代』でも書かれていたように、将来的に日本は「行政まかせ」ではやっていけない。本書では「楽しく自分たちでやっている」事例ばかり取り上げられているけれど、「それが楽しくなくても、自分たちでやらざるを得ない状態」になることは想像しやすい。(やらなければ、財政危機でゴミ収集がストップして街中がゴミだらけになった、イタリアのナポリのようにになるだけだ)
でも「どうせやるなら、みんなで楽しくやろう」というメッセージがこの本には込められている気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2014年2月15日
読了日 : 2014年2月15日
本棚登録日 : 2014年2月15日

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