戦時中に執筆された短編集。
防空壕の中で娘に読み聞かせていた昔話をもとに書かれた「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の4つのオマージュ作品からなる表題作の「お伽草紙」や、同系統の創作話がたくさん収録されている。
このお伽草紙がめちゃくちゃ面白かった。物語の構成はそのままに、登場人物の内面を深く掘り下げることで、昔話に新たな解釈を与えて、太宰らしい作品となっていた。
なかでも一番好きなのは「浦島さん」。浦島さんと亀のやりとりが面白い。浦島さんに助けた亀が竜宮へ招待しようとしても、そんな批評のない国があるとなかなか信じられない浦島さん。それを説得する亀さんがなんともおかしかった。そして内容も結構深かった。
ここまで想像を膨らませて物語として落とし込める彼の才能と努力はやはりすごい。太宰治ってただ暗いばかりじゃないのよね。
戦時中、過酷な状況下で戦う日本人のための娯楽として役に立ちたいという思いでこの小説を書いたことが作中で語られている。
日本人なら誰もが知っている昔話が、こんなに面白くオマージュされているのだから、きっと多くの人に楽しんでもらえたんじゃないかな。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月31日
- 読了日 : 2023年8月14日
- 本棚登録日 : 2023年6月1日
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