柚木麻子さんの『ついでにジェントルメン』に登場した菊池寛。
とても魅力溢れるキャラクターとして描かれており、菊池寛の作品を読んでみたいなぁと思っていたところで、おびさんのレビューを読みこの作品に決めました!
難しくて挫折しそう…と構えていましたが、おびさんのおっしゃるように真っ直ぐな話で読みやすかったです。
40頁弱と短い話のなかに物語の真髄がギュッと詰め込まれていました。
前半は、市九郎の話。
主君殺しの大罪を犯した市九郎。
次々と悪行を重ねる市九郎に同情の余地もない。
しかし市九郎にも良心が残っていた。
人々を救おうと僧侶となり、生涯をかけての難工事に邁進する。
生涯をかけても償いきれないほどの大罪。
はたして善行を積むことは罪を償うことになるのか。
後半は、実之助の話。
殺された主君の子である実之助。
仇討ちをすべく旅に出る。
そしてついに市九郎を洞窟で発見する。
しかし大切な人を殺した憎き相手は善人の僧侶となっていた。
さて復讐の機会がやってきたとき、実之助はどうするのか。
あのとき、市九郎は実之助に仇討ちされたかったのではないか。
罪を背負いながら生き続けることは苦しい。
楽になりたいと思った瞬間もあったに違いない。
決して赦されることがない罪。一生背負って生きていくという覚悟。
市九郎のことをなんて酷いヤツなんだと思っていたのに、後半にはもう勘弁してあげてと思わずにはいられなかった。
市九郎を受け入れた実之助も含めた二人の決断と覚悟。
罪、償い、復讐、赦し。
加害者と被害者という立場でありながら、それをも超越した境地。
人間の愚かさと偉大さとが見事に描かれていた。
この作品に出会えてよかった。
- 感想投稿日 : 2023年3月10日
- 読了日 : 2023年3月9日
- 本棚登録日 : 2023年3月7日
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