土星の衛星タイタンに生命体がいる!: 「地球外生命」を探す最新研究 (小学館新書 193)

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  • 小学館 (2013年12月2日発売)
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最先端の成果を伝えようとする熱意がほとばしる。

太陽系内の生命探査に詳しい。タイタンだけではなく、エウロパ、エンセラダスにもかなりの紙幅を割いている。

大気循環、負のフィードバック、酸化、還元などの観点から生命が誕生する条件を考察。地球的でない生物による化学合成の在り方も示す。

・二酸化炭素による温室効果というものを、人類が初めて明確に意識したのは、灼熱の大地と熱い二酸化炭素大気を持つ金星の姿が明らかになってから。
・およそ40億年前に地球上に原始生命が誕生し、我々の祖先である真核生物に進化したのが20億年前、大型生物の誕生が6~7億年前、生物が陸上に進出したのがおよそ4億年前。ここまで進化したのに、あと10億年で地球は水惑星でなくなってしまう。
・エウロパでは、岩石コアの還元剤がもう底をついてしまっているかもしれない。地球上では、マントルのカンラン石が水に比べて圧倒的に多いので、還元剤としての鉄が底をつくという心配はない。
・太陽加熱型ハブタブルゾーン(地球、タイタン)と潮汐加熱型ハビタブルゾーン(エウロパ、エンセラダス)。後者のほうがメジャー。
・メタンは非極性分子。よってメタンには極性のある分子はあまり溶けることができない。逆にメタンの大気中での反応で生成するエタンやプロパン、アセチレン、ベンゼンなどの非極性の炭化水素とは相性が良く、大量に溶かすことができる。
・後期隕石重爆撃期が太陽系全体の生命進化の大きなターニングポイント。
・タイタンには、もやとメタン、地表気温の間で負のフィードバックの関係が存在する。
・水のハビタブルゾーンの外に二酸化炭素のハビタブルゾーンの外。次にメタンが凝縮するハビタブルゾーン。さらに外には窒素や一酸化炭素のハビタブルゾーンがあるはず。
・大気の酸化還元状態に対して、極めて特異な酸化剤や還元剤が存在していることこそが、生命の存在を教えてくれるサインになる。組み合わせが大事。
・2013年8月の『ネイチャー』に気候変動と紛争の間に明確な関係性があるという論文が。エルニーニョ現象が発生すると、作物の収量減などによって内戦が引き起こされるリスクが上がっている。地球の気温が2度上昇するだけで、地球上の紛争が50%増加する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<宇宙・生命>
感想投稿日 : 2016年3月15日
読了日 : 2016年3月15日
本棚登録日 : 2016年3月15日

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