罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2015年4月25日発売)
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本棚登録 : 2791
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学校のベランダから転落して一人娘を亡くした父親が、その真実を追ううちに、いじめの事実に突き当たっていき、そして…というサスペンス。
理性を保っていたはずの父親が、あるエピソードをきっかけに強い殺意を抱く場面が恐ろしくてそして哀しい。その憤りと気づけなかった自らに抱く後悔が限界まで高ぶって、あまりにも残酷だと感じました。
父親の敵となる女子高生は生々しい造形で、エゴのかたまりな行動と言動のすがすがしいまでの迷いのなさには彼女の空虚さの深さを感じ取りました。誰よりも実は彼女の思考は幼い。けれど発達した知能が、ひどく冷酷な結果を抱いていくという歪みがリアルに迫るように感じました。
もうひとりの大学教員の女性のキャラクタもまた一つのスパイスとなり、双方の「対決」を冷静な視点から眺める役割ともなっていて面白いなと思いました。彼女ほどは行かなくても、巧く相手と距離感をつかめないと感じるときはだれしもあるもので、だから彼女に親近感や頑張ってほしいという気持ちを抱きもしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年5月24日
読了日 : 2015年5月24日
本棚登録日 : 2015年5月24日

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