審美眼を持つ一流の美術鑑定士。仕事とお金、僅かな友人、そして最高の芸術品。それらだけが人生で価値あるもの。人生に必要なのは、それだけだった。
満足していたはずの日々、ある日突然、奇妙な査定の依頼が舞い込む。それは、姿を現さない"顔のない依頼人"。
心がくすぐったくなるような、年のかけ離れた女性との恋。初めてのキス。人生は薔薇色に彩られていく。
幸せな人生の黄昏を予感するラスト、まさかの展開。ああ、騙されました。
彼が彼女と出会い、喪ったもの。それは仕事、お金、人生をかけて集めた女性たちの肖像。それはどれも脆く儚いもの。しかし、決して形には残らないけれど、人生においてかけがえのないものを得た。それは愛すること、信じること。
「どんなことがあっても、これだけは忘れないでいてーーー貴方だけを、愛してる」
それが真実の言葉だったのか、その言葉までもがお芝居のうちだったのか。それは誰にもわからない。
ただ、秘密部屋に初めて入った時、「私の前にもたくさん彼女がいたのね」と言って振り返ったクレアの表情は嘘ではなかったと信じたい。だからこそ、秘密部屋のすべての女性たちを1人残らず持ち去り、自分の肖像だけを残して去っていったことは、「私だけを愛していて」とささやかれているようで。
彼女にもう一度出逢うため、彼女の愛の言葉を信じて、彼はプラハの曇り空の下、今日も来ない女性を待ち続けている。それが切ない。
やるせないラストだったけれど、心にあたたかい感情も残りました。
このストーリー展開には、脱帽です。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
DVD
- 感想投稿日 : 2017年10月30日
- 読了日 : 2017年10月30日
- 本棚登録日 : 2017年10月30日
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