福永武彦は好きな作家なだけに、ロマンチシズムに甘えた男のエゴイズムが鼻について楽しめなかった。トリッキーな構成、死への意識、選べない男などのモチーフは『死の島』への習作とも捉えられるが、人物描写の掘り下げが浅く、この作品に寄り添うことはできなかった。私はその後の長篇小説『忘却の河』『死の島』を先に読んでいたからどうにか我慢できたけれど、(埴谷雄高曰く)「傍らに死がつきそっている芸術家」である福永武彦に隠れたマチスモを感じてしまったことは否めない。複雑な気持ちながらも、他の福永作品への評価は変わらない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年1月13日
- 読了日 : 2013年12月6日
- 本棚登録日 : 2014年1月13日
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