再読なのにまるで初読のように高鳴り貪り読んだ。こんな破滅的に哀しく滑稽で感動的な青春小説ほかに誰が書けよう。突き抜けている。誰もが胸の内に抱えている〈出発〉への欲求。斎木犀吉の傍若無人な短い人生に、その破滅の結末に、憧れと諦念を物語る青年小説家も犀吉同様不恰好で哀れだ。それでも〈出発〉に向けてのトランクをいつも傍らに準備している、その諦めの悪さと自信過剰に共感する。愛おしい。マヤコフスキーの《ズボンをはいた雲》の引用が効いてくる。こうした引用一つで色合いを際立ててしまうのは大江ならでは。素晴らしかった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2014年7月15日
- 読了日 : 2014年7月15日
- 本棚登録日 : 2014年7月15日
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