このボリュームを三日で読み終えたのだからいかに無我夢中に読んだかお分かりいただけよう。戦時下の富士山麓の精神病院が舞台。序章と終章の描写は『富士日記』と大いに被り百合子さん信者の私としてはもうたまらない。自分を宮様と信じて疑わない虚言症患者の一条実見の登場シーンに盟友埴谷雄高『死霊』の首猛夫を重ねずにいられない。それら作品との関係性を意識しながらのミーハー読みも一興であるが、狂気と正気がダイナミックに入り乱れ蠢く豊穣な人物像に舌を巻いた。狂気を扱う形而上文学であると同時に娯楽性も兼ね添えた群像劇、大傑作である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年1月12日
- 読了日 : 2015年1月12日
- 本棚登録日 : 2015年1月12日
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